short
夢で逢えても
『相変わらず貧相な』
『それっ……今言うこと……っ?』
『本当のことなのだから仕方なかろう』
『……なら、何でするのこんなこと』
『貴様が希んでいるからだ』
『そんな、こと……っ』
『……違うのか?』
―あんたは?
……ねぇネウロ、あんたは……?―
ネウロが笑う。これが答えだと言いたげな笑みを、私に。
お互い、素直じゃない。口にすること。
だけどもお互い正直だ。
すること…したいこと、されたいこと……それに伴う反応は、とっても正直……
優しいキス。なつかしい…懐かしんでくれるキス。
滑らかに、時に粘着質に…あたしが受け取る感覚を革手袋越しに触れながら確かめながら……
その、革手袋の感触すら……
このからだの隅々に刻み込まれた、アイツに抱かれたときの記憶が、無意識に望んで希んで恋い焦がれた感覚が、否応なしによみがえる。
『ネウロ……』
あたしは呼ぶ。懐かしく大好きなひとの名前を。
そうしたら、何度も何度も何度もあたし、そうしたなぁって……思い出す。
「………………」
あぁ……
思い出して、しまった…………
―あぁ……
うん……
夢、だね…………―
目が覚めて、私は悟る。冷静に。
もう、泣くこともしなくなったなぁって、客観的に思う。
一年くらいは泣いてたっけ。夢にアイツが現れるたんびに、気持ちを…感覚をよみがえらせちゃって。
今だってそれはよみがえってくるけれど……もうどんなに…どんなにこころとからだがあいつを恋しがって、寂しい目覚めがどれだけ重なっても…………
そんなのに、すっかり慣れてしまったから。
先々のことを思わないわけじゃない。不安にならないといったら当然ウソになる。
でも、あたしもあかねちゃんも吾代さんも…それには触れない。
あたしはあたしに甘くって、あかねちゃんや吾代さんはあたしに優しくって。
………だから。
もしも。
……もしも、一生あいつが戻らないとしたら……
あたしはさすがに、いつかまた泣くようになるだろう。
だから……だからお願い。
出来るだけ早く還ってきてね。
そんなふうに思うようになった3年目。
あたしはきっと、ネウロに再会したら泣いちゃうんだろうな。
そう、思う。
* * * * *
…………まさか、泣くヒマもない衝撃的再会だなんて……思わない、じゃん……
※ ※ ※ ※ ※
『夢で逢えたら』
なんて、そんなわけあるかい!と、ふと思ってみた瞬間が今日ありまして
そしたら、昔更新した『日常は、かくも愛しき』って文章で、
重ね重ね飽きる程見てきた、これは幻なのだと軽い絶望を伴ったいつもの「夢」ではないのだと
ってかいたよなぁって思い出しての、勢いにまかせての超突発的な話です
そのうちネウロさんバージョンもかいてみようかな
思っただけですが(笑)
20210121
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