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いつもの戯れ(X'mas ver.)
「ヤコ、ヤコ!」
事務所に届けられた色とりどりのプレゼントボックスの仕分けをしていたら、ネウロに呼びかけられる。
「ん……?」
顔だけそっちの方に向けると、ネウロが組んだ両手の上にアゴを乗せてニコニコしていた。
ネウロの目の前には、ケーキが入ってると思われるキレイで大きな箱が。
「何それ?もしかしてケーキ?いつの間に?」
「我が輩からのクリスマスプレゼントだ」
思わず私は身構えてしまう。
いや、ケーキそのものは本物。気が付けば甘い良い香りが漂ってきてたし、何より箱に印字されてる銘柄が、堂々たるあの『王美屋』なんだから。
ただ……
絶・対、何か企んでるな。
食べようとする直前に謎のクリーチャーにさせられるか……仮に食べることが出来ても顔にぶちまけられるか……
「……ヤコは、我が輩の心尽くしよりも赤の他人からの袖の下を優先するのか?」
両手にアゴを乗せたまま顔を傾げて、例の『ダメか?』顔で言われては拒否どころじゃない。
「わかったわかった」
慌ててネウロの方に行こうとすると、
「アカネの珈琲があった方が、より美味しかろう」
「…………」
何だか妙に優しげで、ますますうさんくさいな……
それでもあかねちゃんが淹れたコーヒーを持ってネウロの側に行く。その間にケーキは箱から出されてた。とてもキレイなホールまるごとのケーキ。とっても美味しそう。これ、全部食べれるんだ……たぶん。
ちょっとびくびくしながら私は、
「それじゃ、いただこう、かな」
と言うけど、フォークが見当たらない。
「手で食べろと?
……まぁそれでもいいけど……ぅわっ!」
不意に腰に手が回ってきて、驚く間もなくネウロの膝に座らされた。
「え、何?ネウロの懐ん中で食べなきゃなの?」
「仕方なかろう、我が輩もプレゼントを貰わなければならんのでな」
「……?」
何のこっちゃと思ってると、ネウロは中指でホイップの飾りをすくう。その指が目の前に迫って、
「ほらヤコよ。『あーん』は?」
「…………っっ」
同時に耳元で囁かれてはたまらない。
戸惑った勢いで口を開けると、普通にホイップが舌に乗せられる。
……うん、シチュエーションがアレだけど、クリーム美味しい。
「うまいか?」
「……うん」
「そうかそうか」
次はホイップをたっぷり付けた、洋酒の効いたスポンジ。苺にシャインマスカット、繊細な細工のチョコの飾り……
……を、ネウロは手のひらやら手の甲やら手首やら、その時々で場所を変えて乗せては私の前に差し出す。クリームも残らず舐め取らなきゃだから、次々食べていくうちに何だかちょっとずつ恥ずかしくなってくる。
そんな妙な感覚を、コーヒーを一口含むことで紛らわしていた。
「ねぇ……今更だけど、フォークで…いや、一人で食べさせてくれないの?」
すぐ脇のネウロに問いかけると、次のケーキをすくい取るので腕を伸ばしたネウロはこっちを見ないまま、
「本当に今更だな」
そう呟くと、指にすくい取ったアラザンが散らばるホイップを口に含んだ……
え、食べた……?
……じゃなくて。舌に乗せていた。
「…………」
何をしたがってる…させたがってるかは、イヤでもよーくわかる。全くヘンなことばっか思い付くしさせたがるんだから。
「ふぅ……」
ワザと声を出したため息を一息吐いてネウロの方を向く。
ホントにさ、ケーキをワザワザ調達してまでこんなこと、するのか?
……いやするんだ。ネウロだから。
ネウロの舌の上でホイップが溶けるように崩れていく。戸惑ってる場合じゃあ、なさそう。急かすようにアゴを取られるから仕方なく、私からも顔を寄せて、溶けて垂れないように舌を伸ばす。
―あぁもう……
こんなんでも美味しいなぁ……―
悔しいから、ホイップを乗せているものごと口に含んで味わってやった。
何がネウロにとってのプレゼントなのか知らない。……ホントに知らないよ。
だけど、気紛れのいたずらのついでに…何だかんだで半分以上食べてしまったケーキ以上に私は今、味わわれてる。
結局はいつもと同じ展開のようである、そんな私達のクリスマス。
※ ※ ※ ※ ※
原作で、ネウロさんにケーキぶちまけようとした弥子ちゃんのコマの片隅に
「後で食べるし」
って小さくあったのを思い出しまして
今日がクリスマスイブだったので突発的に
まぁ、アホネタですな笑
20201224
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