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彼ら的なSD(ソーシャルディスタンス)
それは、『桂木弥子魔界探偵事務所』で頻繁にあるメディア取材。その時の、とある些細な出来事……
「……桂木さんの、今後のご活躍を期待しております。この度は取材させて下さいまして、ありがとうございました」
今回弥子を取材した、とあるメディアの人物は、そう締めくくり立ち上がった。
「こちらこそ。お疲れ様です」
弥子もにこやかに短く返し、立ち上がる。
「……ところで……」
記者は、弥子の手元に視線を向けつつ、躊躇いがちに問いを投げかけた。
「……その、貴方方の繋いだ指は、どういう……」
立ち上がった弥子につられて少しソファから腰を浮かした助手。
ふたりの様子に、記者はようよう言及する。
探偵『桂木弥子』と、助手の某(なにがし)は、取材の問答の間ずっと隣り合って座っていたが、少々の間をとりつつ、何故か小指だけを繋いでいた。
記者は勿論それに目と注意力を奪われていたが…何故か詳細を訊くことを始終躊躇わされ……
だがそのまま取材を終わらせられることなく、記者はようよう言及することが出来たのだ。
「これは、ネ…助手の方針なので致し方なく…
私からは何とも……」
弥子は無表情でそう言い、助手は、
「昨今のsocial distanceの風潮もありまして、我々は『適切な距離』を保ちつつ貴社の取材を受けさせて頂いたということです。
ただ、どうにも…先生はこうしていないと寂しくて仕方ないと仰るので致し方なく。
……そう、巷の噂にあるウサギのような状況なのですが…何か?」
と、飄々と嘯く。
「は…はぁ……そうですか……」
記者はそう言わざるをえず、もっと深く訊きたいものだと思っているのだが……
「「まぁ……ご時世ですので」」
二人が口を揃えて言うので、件の記者はそれ以上は問えそうになく……
また、余計なことを記事にすれば己の身が危うい予感がし、こんなにも格好のネタがあるのに…と内心歯噛みするしかない。
そして、
―この探偵の入籍…結婚報告…それじゃなければスキャンダルを、絶対に見逃さないぞ……!―
……と、思ったとか思わなかったとか。
※ ※ ※ ※ ※
本当に久しぶりの三人称での更新です
やっぱり一人称の方がいろんな面で文章紡ぎやすいしね、感情表現とか(笑)
小指繋ぎは、ふとしたことで浮かんだ小ネタワードでしたか
恋人繋ぎもいいけど、こういうのも初々しくていいね!
ネウヤコは初々しいどころか熟しすぎてる感あるけどね!!
要は、何度も文章にしてきたバカップルを、こ うして再びみたびと、軽い気持ちで更新したかったのだよね……!!
あ、あと。うさぎは寂しいと死んじゃうって実は迷信だとか。うさぎは本来縄張り意識が強い生き物なんですって
大人になってから知りました
……お読み下さいまして、本当にありがとうございます……
20200824
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