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雨は夜更け過ぎに(3)

 私の抗議にネウロはきょとんとして、
「バカを言うな。我が輩が本気を出せば、雪玉はダイヤ並に固くなり、投げ付ければマシンガンを上回る勢いだぞ」

 ……そうですね。
 あれで、ものすごーく手加減してるのよね。
 はい、わかってました。


 なんて…そんな具合で抗議はあえなく聞き流されて、局地的大雪の続く、ここ雑居ビル屋上では再び…
 私は、ネウロに雪玉を投げ付けられたり、雪だるまにされたり、積もった雪にダイブさせられたり。もちろん私も反撃するけれど、ネウロにスキがないから雪玉1つさえ当てられない。その有様はもう、遊んでるというより確実に…すっかりやりたい放題、ネウロに遊ばれてるとしか思えなかった。

 しかも、当然あげる悲鳴は、降りしきる雪にかき消されてしまって、ね。


 雪が降ったからって喜ぶんじゃなかったよ…!!







「…やれやれ」
 どんなに雪にまみれても、ぽんぽん叩くだけで、すぐ落ちるからいいな。襟元から自然と入っちゃったり、ムリヤリ入れられたのには、閉口してるけど。

 そして、動き回ってずいぶんあったかくなった体は、ちょっと落ち着いただけで、もう冷えてきてしまってた。

「あー、冷たいっ寒いっ凍えるっ!…ネウロもう気が済んだ? そんならさ、早く事務所戻ろうよ」
「もう戻るのか?」
「はい、戻ります戻りたいです戻らせて下さい」
「フム…事務所に戻っても別に構わんが…」
 もう…まだ遊び足りないのかな、コイツってば。

 ちょっとうんざりして見上げると、ネウロは目で屋上の隅を指し示していた。その方向を見てみる、と。

 そこには、小高い雪の山があった。掘り抜かれた穴も見える。あれ、TVとかで見覚えがあるな。


 あれって…

 カマクラって、ヤツ…?



「…いつの間に?」
「企業秘密だ」
「ふーん…
 でも、これすごい! すごすぎるよこれ!」
 私はまた嬉しくなって、初めて見る本物のカマクラに走り寄る。
 遅れてきたネウロは、カマクラの外壁をぺたぺた触る私を見てなのか、ご機嫌なカンジで笑ってた。そして得意気に言う。
「そうだろう」


「ね、中、入れる?」
「勿論」



 そこは、2人入るのがやっとの狭い空間だった。ワザとなのかな、このサイズは。ここで私達は、否も応もなくくっついている。
 小さな出入口から外を眺めると、降りしきる雪が街明かりに照らされ浮かんでて…

 キレイ…





 ここは、無限に降るやわらかな天の使者に囲まれて、雑音はみんな、それらに吸い込まれて…
 静かで真っ白な世界で、あたしは青い魔人にぎゅっと抱かれて、いる……

 私のコートを敷物代わりにされたのは正直困るけど、そんなに汚れないだろうし、そんな小さなことに目くじら立てるには…


 この空間はあまりにも…


「…カマクラの中があったかいって、ホントなんだね」

 このあったかさは、あまりにも……


「…そうだな」




 ……ネウロ、ありがとね……








 あまりの心地良さにうっとりしていたのに。

 突然、ビッターン!と平手を見舞われた……


「………んなっ…!?」

「…眠ったら、死ぬぞ」
 呆然と頬を押さえる私に、ネウロはあくまでも、にこやかに言う。




 ……だからって…!






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あきゅろす。
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