short ただひとことに 『全身全霊に注意を払え、吾代』 化物のヤローは、あのガキの種明かしをした後に、珍しく、まともな口調で神妙なことをケータイ越しに言いやがった。 昔の顔馴染みのガキに追われてる最中のことだ。あのガキ、ホンキで俺らの命を取りにきてるのがわかる。 だからこそ厄介で、だからこそ…ハラが立った。だが、ヤキを入れてやりたくても、うかつに近付けねぇんじゃあ、どうにもならねー 一緒になって懸命に走る探偵をチラッと見る。コイツの向こうには、いつでもあの化物がいた。 ケータイを通じて…探偵を通じて、状況を正確に把握して、的確な指示を探偵に出していた。 テメーは全く動けねークセして。だからこそ探偵を信じて、俺らを信じて。 ちっと胸クソ悪かったが、背に腹は代えらんねぇ。ガキを退ける為に、俺は化物を頼りにするしかなかった。だから、探偵からケータイを取り上げて、化物の知恵を借りることに…指示を仰ぐことにした。 『我が輩と違って… 貴様等は簡単に死ぬのだ』 続けて化物は、縁起でもないことを言いやがる。 一瞬だが、頭に血がのぼった。あの化物らしくない物言いからすると、ヤツはヤツなりに心配してんのかもしれねーがよ。 よっぽど、怒鳴ってやろうかと思ったまた次の一瞬、化物は小さく呟いた。 『だから………』 「あぁ?」 『…………』 「…ケッ」 俺はケータイを…化物を探偵に投げ返す。 「簡単に死ぬとか縁起でもねえ。 これだからあの化物は…」 「!」 探偵は不安そうな顔をした。 探偵。オメーがそんな顔をする必要なんてねーんだよ。 アイツは俺に言った。 短けぇクセして本心が丸わかりの…何よりも優先する、命令を。 『だから…… 吾代よ。ヤコを護れ』 …言われなくても、わかってらぁ… 終 <前へ><次へ> |