[携帯モード] [URL送信]

main storyT
〜看る魔人〜 06

 熱い体
 荒い息遣い
 混濁した、意識……



 ……このまま、この女の魂が消え失せるなどということは、なかろうか……



 この面持ちを不安と呼ぶのならば、我が輩はヤコを恨むべきであろうが……


 今はそんな場合ではない。
 恨み言ならば、後でいくらでも。

 しかし、我が輩はそれでも、どうしたら良いのかがわからないのだ…



 …ただ、熱いからだを抱き締めるのみの、我が輩にとり虚しいときが過ぎてゆき……


「うつ…らない……?」
 ヤコは漸く、囁く…ように口を開いた。
 それは…ようやっと、唇から声として発せられた声音であることは明らかであり……



 この我が輩を案じていられる身の上か貴様は……



「ご心配なさらずに、先生」
 我が輩は、なるたけヤコを刺激せずに済むように、助手の言葉遣いを用いることにした。

「…僕がついていますから、先生は、養生なさって下さい。
 でないと……」

 …でないと……堪らない。


 ヤコは儚げに、それでも笑みを浮かべた。


 ヤコは…

 我が輩の手を取り
 自らの頬へと誘う



「きて…くれて…ありがと」

 掌へ、微かな口付け。


「…………」


 口惜しくも戸惑う我が輩……




 ……ヤコとは、とても思えん……





「…先生…何でもお望み通りにいたしますよ…
 どうぞ…何なりと仰って下さい…」


 助手としてとはいえ、このようなことを口走れる我が輩も、とても自分とは思えない……








[*前P][次P#]

あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!