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〜看る魔人〜 05
我が輩が常日頃感じているヤコより、熱い。
ヤコの平熱は、きっかり36度であった筈。
ふと、以前ヤコを熱いと思ったのは、何故なのだろう…と、思う。
我が輩は生憎、肉体の傷は癒せはしても、体内に入るモノによる障害は経験がない。
要は為す術が、ないのだ。
だが、しばらく額に手をやっているうちに、何故かヤコの表情が、やや安らかとなった。
…と、瞳がもの憂げに開く。
ヤコは、我が輩の手を、腕を認め、泳ぐように視線を伝わせ…瞳が我が輩を漸く捉える。
「ネウロ……」
ひとこと、覚束ない声音で呟き、覚束ない動きで額の我が手に両手を添える。
掌までも…熱い。
そうして…
「きて…くれ…たんだ…」
途切れ途切れに呟きながら、涙をひとすじ、落とした……
我が輩はどうしたら良いのかが、わからぬ。
「…阿呆が」
仕方無く、もう一方の手を頬に添えた。ヤコは、額と頬の手から腕に己が腕を絡ませ、どうやら起き上がろうとする。
反射的に腕を添えて抱え起こす。するとヤコは、起き上がった途端に、力なく我が輩の胸に頭を落とした。
「事務所、行けなくて……ごめん…ね…」
「……」
何故謝罪を口にするのか…
仮に来ても、我が輩を煩わすだけであろうに…
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