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〜看る魔人〜 03
『今…弥子は、家政婦さんにみてもらっています』
ヤコの母親は、我が輩が知りたかった一言を漸く口にした。
それだけ言えば良いものを…我が輩にとって、貴様が良い母であるか否かなぞ、どうでも良いことなのだ。
「差し出がましいかもしれませんが…よろしかったら、僕がこれから、先生の看病に伺いますが…?」
せいぜい丁重に提案してやると、電話の向こうが慌てた声をあげる。
『いいえ…とんでもない!
助手さんのお手を煩わせるわけにはいきませんし、弥子の風邪をうつすといけませんから…
ひとまずは、弥子がこんな状態なので、ご連絡差し上げただけですのよ』
(フン…)
我が輩は今度は、心中で鼻を鳴らす。
この我が輩が人間共の病原菌なぞに負け、侵されると思っていることが気に喰わん。
第一、この我が輩が、奴隷に会うことを拒む権限が、電話の向こうの者にあるとでもいうのか。
……その後の会話を適当にやり過ごし電話を切ると、アカネがしょぼくれた風情で、
『弥子ちゃん、やっぱり風邪ですか…?』
と、ボードに書き、我が輩に問うた。
やっぱり…とは…
アカネは、ヤコの不調の兆候…こうなるであろうことを知っていたというのか…
それではまるで…
異変を知りながら、殆ど気に留めなかった我が輩が、愚か者のようではないか……
そのようなこと、アカネは微塵も云ってはいないのだが。
しかし
アカネがそう云うのならば、昨日のヤコは相当辛かったということなのであろう………
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