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〜看る魔人〜 02
『ウチの娘、ゆうべから風邪で寝込んでしまって…学校も休んだんですよ』
風邪…?
言われて思い返せば、昨日のヤコは、『風邪』に該当する症状で、いかにもしんどそうにしていたような…
これまでヤコは『風邪』はおろか、体調不良に見舞われたことがなかった。従って、珍しいとは思ったが、我が輩は特に気にも留めなかった。
いつものように蟲を密かに憑かせたまま帰宅させ、蟲はその後呼び戻したのだった…
足を怪我した…正確には我が輩が怪我させた…時といい、まあ何と、脆く厄介な肉体を持っていることか。
所詮、肉体的には人間の域を越えぬ、儚い存在でしか、ないものであるのか……
何とはなしに忌々しいが、それは声にも出さず。
「そうですか…昨日僕は気付けませんでしたが、ご帰宅なさった後に…?」
『そうなんですよ。食事も取れなくなってしまって。熱もすごいですし』
あのヤコが生ゴミを喰えない程となると、相当な大問題ではないのか…
ふと、気になること。
「ところで、お母様はお仕事だと仰いましたが、先生は今、どうしていらっしゃるのでしょうか」
『そうなんです、どうしても仕事が休めなくて…情けない母親ですけれどね』
「そんな、とんでもない」
我が輩は無難に返しつつも、思わず心中で舌打ちをしてしまう。
ヤコもそうなのだが…
何故、女という生き物は、要点を言わずに余計なことを喋るのであろうか。
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