main storyT 〜不可解〜 06 事務所に入り、ようやくネウロは口を開いた。ただし、 「アカネ、少し下がっていろ」 という、奇妙な命令。 これは、壁紙の裏へという意味である。あかねは素直に潜り込んだ。 『おかえりー!!』 という文字を残して。 「…ネウロ…?」 少し怖くなる。 自分はいったい何かしたのだろうか。この魔人の機嫌を損ねる何かを…… それとも自分が居ない間に何かがあったのだろうか…? 「きゃっ!!」 いきなり壁際に突き飛ばされた。ネウロはやおら近付き、両腕で弥子を挟むかたちで壁に手をついた。拘束ではないが、弥子はもはや動けない。 顔を寄せて、 「…貴様は、我が輩にデリカシーがないなどほざいていた割には、貴様自身全くそれを持ち合わせていないのだな」 「デリカ…えっ…何で知ってるの?」 いつぞやネウロについてそう云ったことを知られていたことに意識がまず向いてしまった弥子は、ネウロの冷く鋭い眼差しにようやく気付き、戦慄した。 「どういう、こと…?」 怯え震える声。 魔人の耳に、同じ者の全く質の違う声が甦る。自身を苛む耳鳴りの、正体が…… ―大好き!!― ―笹塚さん大好き!!― . [*前P][次P#] |