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〜不可解〜 04
「こんにちは、笹塚刑事。僕の先生を、わざわざ送って下さったんですね。本当にご足労様です」
助手はあくまでも、朗らかに言う。
しかし……
そばにいる少女には判り得ない、思惑の駆け引きと牽制が、ただそれだけの言葉に含まれていた。
彼は成り行きとはいえ、事務所に赴く筈であった。助手は、送ってきた手間を労うという丁重なかたちで、それ以降を遮断したのである。
このようなことは、裏心ある大人にしか出来ない。男2人共が、各々の心の内で、気付かない弥子のあどけなさに安堵していた。
…無論、それは一瞬…
「……じゃ、俺は仕事に戻るとするよ。
……弥子ちゃん。
…それはさっき言った通り、1人でね」
助手への密かな牽制は忘れずにしておいてから、彼はその場を立ち去ろうとする。
「あれ笹塚さん、用事あったんじゃないんですか?」
「別に急がねーからまた今度でいいよ。一番の用事は済んだからね」
「あぁ、コレ」
少女は、手に下げたものを掲げて、笑った。
―顔が見れたから、いーや…
予想もしなかったことばも、聞けたし……―
余録はついていた上、多少ショックも受けたが。
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