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〜吾代受難再び〜 08
さすがに化け物はハッキリとは言わなかったが、質問の内容と化け物の口調から、わかっちまった…
探偵とこの化け物は、実はまだデキてなかったってことを、だ……
はじめは自分の感覚を疑ったが、どーも間違いないようだった。
ま、カンなんだけどな…
けど、察したことがあまりにも意外だっただけに、さすがに戸惑って視線を泳がせると、いつの間にか壁紙から出て来てた秘書と目があった(…気がした)
話を聞いてたんだろーな。俺が何に戸惑ってんのか解ってるよーだった(…気がした)
そんで秘書は、俺の疑問を肯定するかのよーに揺れた(…何となくそー見えた)
化け物がしばらく黙ってるんで、
「…ちっとは疑問解決したのかよ?」
訊いてみると、化け物はヘンな笑みを浮かべて言った。
「…知識も語彙も、総じて脳細胞の乏しい吾代に訊いた、我が輩の人選ミスを痛感した…」
…何だと…!このチェリー野郎が!!
「愛だの恋だのの違いは我が輩にはわからんがな。
…だが、そこそこ、若干は参考になったぞ」
「………」
…そーかよ。それは良かったな。
おかげで俺は、確実に眉間のシワが……
化け物は心なしか脅迫めいた低い口調になって言う。
「言わずともわかっているだろうが、この我が輩が貴様に対して、あのような質問をしたことは、決してヤコの耳には入れてくれるな」
そら、こんな男同士の会話をしてたなんて、探偵に知られたくはねーわな…
や、たいしたことは喋ってねーが。内容は中学生レベルだしな。
「…わーってるよ」
「ならば良い。
それと、アカネにも余計なことを訊こうなどと思わんことだな」
…ぐ…っ…
抜かりなく釘を刺しやがる。
…ま、さっきの問答で、ちょいニブい俺にだって、少なくともコイツらがまだ清いかんけーってことは判ったから、いーけどよ。
コノヤローは、探偵のことになると意外と無知で余裕ないもんなんだな。ぱっと見、そーは見えないけど、コイツはコイツで苦労してんのかもしれねぇ…
それ以外なら何があろーが化け物らしく、憎たらしい位ぇ冷静沈着でいられるんだろーけどよ。
そんだけ、あのガキにアレなのかね。
ま、可愛いっちゃ可愛い娘なんだけどな、確かに。
何だか、ごくフツーのオトコみたいに感じちまって、親近感覚えちまうよーな…錯覚だろーけどよ。
秘書は、そんな俺達を見ながら、ふりふりと揺れていた。
なるほどな、この化け物とあの探偵のやりとりは、見ていて面白いんだろーな…
そんなんを、少し…ほんのちょっとだけ、理解した。
俺には到底理解できねー部分もあるが。
いちゃついてんのを見てられる、見られて平気ってゆー、ここの3人の関係のことだぜ。
…や、少なくとも、探偵がホントに平気なんて有り得ねー気はするがな。
はー……
どっと疲れが出てきて、俺は考えるのをやめた。
もー帰ろう。化け物に付き合ってると、虐待無しでも疲れるだけだ。
「…じゃ、俺ぁ帰るわ。
せーぜー頑張んな」
一応挨拶をしてやると、
「今度ここに来た時には、ノックでもすることだ。
次に邪魔した時には容赦はしないからな」
よく言うよ。
「…テメーも、いちゃつく時は鍵を忘れんなよ」
「…フン」
「じゃ、またな」
全くえらい目に遭ったが、化け物も所詮はただのオトコだったってのは、良い事を知ったと思う。
探偵は逆に…
フツーに見えて、その実、全くフツーじゃないってことか……
……どーなんのかね、ホントに……
終
[*前P]
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