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〜ネウロ逡巡〜 09

 手持ち無沙汰の片手を、ヤコを支える役割に戻そうと腰に滑り込ませると、

「ひゃっ!!ネウロやめてっ!!くすぐったい!!」
 ヤコが突拍子もなく甲高い声をあげた。

 同時に、電話越しに激しく咳き込む声。

 おや、何気ないことであったが、これは面白そうな……

「ちょ、ネウロ、いきなりそんな…くすぐったい…!!」
「…僕は何もしていませんよ、先生」
 携帯の向こうに聞かせるように、我が輩は言った。
 実際何もしていない。ヤコを抱き直す為の手を、そろっと動かしただけである。

「だっていきなり…」

 げに、無邪気とは罪造りである。
 このやりとりだけでは、こちらが見えない向こうの者は、果たしてどんな想像をしたことやら……我が輩としたら目下の幸いなのだが。

『あ、あぁ、忙しいとこ悪かったね。いやちょっと心配したからさ、かけてみただけ。そんじゃ、お大事にな』

 電話越しの哀れな刑事は、そう言うなり慌てて電話を切った様子。面白いので、こればかりは我が輩は聞いていた。


 邪魔をされたのは大いに癪だったが、他ならぬヤコが、自覚しないまま撃退したので、我が輩は溜飲が下がったものだ。




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