main storyT
〜そして助手は苦笑い〜 13
体を離し顎をつまみ上げ、赤く染まった顔を眺めると、
「やめてよ…」
顔が固定されているので、視線だけ逸らし、掠れた声で懇願する。
言葉通りに嫌という訳ではなかろうが…
…慣れぬものなのか
それとも、そういったものなのか…
解せぬまま、唇を触れる程度に…せいぜい優しく…押し付けてやれば、彷徨っていた視線がこちらに戻り、瞳が緩やかに閉じられた。
所在なさげにジャケットを握っていた掌に、無意識にか力が込められる。
それを感じた途端、我が輩の中で戦慄に似た感覚が走ってゆく…
衝動に任せ、身体ごと絡め取る。唇を深くくわえ込み、味わってゆく…と、ヤコから感じ慣れぬ『味』を認めた…
苦いような甘いような…
…アカネの作ったカフェオレとやらの、味なのか…
これを、ヤコは本当に美味そうに嬉しそうに……
「ん……」
甘やかな声に気付けば、いつの間にかジャケットを握り締めていたヤコの手は離れ、我が輩の背へと回り、今度は背中の布地を固く握る。
…小さな身体で、我が輩を抱き締め返している…
やはりこの女は、ことばなぞより、些細な行動で示す感情の方が…余程素直だ…
.
[*前P][次P#]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!