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〜そして助手は苦笑い〜 11

 我が輩は秘書デスクの側の壁にアカネを戻しにゆく。その我が輩の背に、ヤコはぽつりと呟く。

「…そんなことないもん」

 心なしか安堵の声音が滲んで聞こえるのは、気のせいなのかどうなのか……


 アカネを壁に戻す際に、また一言命令を与える。アカネは素直に壁紙に潜り込んだ。

 どうせ、壁紙の向こうで聞き耳を立てているのでは、あろうが…


「…このような有様では、仕事に支障も出ようが。幸い今日は何もないからいいものの」
「…ないなら、いいじゃん」
「そうもいかん」
 アカネのデスクから戻り、ヤコの隣に座る。

「我が輩を退屈させるのは、何にも勝る不躾な行為ではないのか?
 貴様は時に、言葉を過剰に受け取り過ぎる。根はドMのくせに、いつまでも進歩せんな」
「ドMは余計だってば!
 それにそのセリフ、あんたの言葉を話半分に聞いてもいいってことなの?」
「…それも困るが」

 全く、ああ言えばこう言い、こう言えばああ言いの、屁理屈吐きが……


 我が輩の言い方も悪いのであろうが、変えられんものを変えるつもりは、毛頭ないのだ。


 この女も、平静の精神状況では、素直にものを言いはしないのであろう……



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