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〜ネウロ逡巡〜 06
もう一度。
「…ヤコ…?」
ヤコは、いつの間にやら眠っていた……
知った途端に温もりが熱さにかわる。
この女の尋常ではない摂取カロリーは、どうも大幅に体温に消費されるらしい。今は足の痛みもあるのであろうが。
「………」
背にかかる、規則的な息遣いが、熱い…
眠っているならば…と、身体を支えている腕から、もたれかかられ密着している背中から、我が魔力を発し送り出す。歩きながらなので気が散じる。
我が輩は道を逸れて公園に入り、月明かりの木陰に立った。
あまり力を込めると、このか弱い生物には良からぬ影響が出るやもしれぬ。注意を払う必要があった。
虫ケラを癒すなぞ…魔人である我が輩にはあるまじき、『慈悲』ではないか。
忌々しく思うのであるが…そうせざるを得ないのだ。我が輩自身が。
力を注ぎ終え、後方のヤコの足を見やると、白く細いそれに戻っている。
安堵するとともに、我が輩に此処までさせたことが憎らしくなってくる。
…これは決して、八ツ当たりなどではない。
ヤコは無事に癒せた。その安堵感は確かにある。
だが、同時に湧き上がる、どうにも我が輩らしくない行為による軽い忌々しさを、どうしてくれようか……
ふと、思い立つ。
我が輩はヤコを垂直に放り投げた。
ヤコは高々と飛躍し、うまい具合に真上の枝に激突し、
「ぎゃっっ?!」
間抜けな叫び声をあげた。
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