main storyT
〜明けない日はない〜 09
「俺、何となくだけどさ、わかったんだ」
「…何を」
笹塚は手持ち無沙汰でもないのに、火を着けないまま煙草をくわえ、次のことばを待つ。
「アイツはさ、アイツ色にあの娘を染めよーとして…
でも、あの娘と居ることで自分も染まろーとしてるのか、自然に自分も染まっちまってるのか、どっちかなんだろーな…
って」
「………」
詳細は決して口にしない漠然とした物言いであるのに、対象がはっきりしているだけで、匪口の言いたいことが解る心地がするのが、笹塚には不思議だった。
あの2人を思い浮かべる。
「さぁ…」
それだけ、答える。
「今の2人の関係は、何かに到る、過渡期なんだろうな…って思…」
「…辛気臭ぇ」
笹塚は語る匪口に膝蹴りを喰らわせる。
「あだっ!!
なんだよ笹塚さん!
人のコト言えないだろ!」
腰をさすりながら、匪口は恨めしそうに睨み、呻く。
―お前が弥子ちゃんに何したか知らねーけど…
くすぐったい
くすぐったい…
むず痒い……―
「今度、酒奢ってやる。
…笛吹には内緒にしろよ」
「…うん…笹塚さん、恩に着ます…」
匪口は、薄くだが、漸く笑った……
.
[*前P][次P#]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!