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〜明けない日はない〜 06

 ……柔らかい布とビニールのクッションに丁重に包まれていたものは、思った通り、自分があの時落とした眼鏡だった。


 目にした途端、その時の情景や感触が、一気に脳裏に蘇る。


―こんなもん…ワザワザ桂木の名前で送ってきて…


 忘れるなって?

 アンタの恐ろしさを、忘れるなってことか?


 忘れる必要ないのか?

 桂木との間にあったこと…俺の気持ち、を、忘れる必要ないってことなのか…?


 それは何だよ?

 余裕か?
 …同情…なのかよ…?

 ワケわかんねーよ…―


 自分宛の、膝の上のものを眺めながら巡る考えを持て余していると、

「匪口、来てたのか。何してんだ?こんなトコで」

 不意にかけられた声に、我にかえった。
 顔を上げると、笹塚が立っている。


「何だ、それ。
 …それが、お前に届いたってヤツか?」
「…?
 何で笹塚さん知ってんの?」

 笹塚は、匪口の問いに肩をすくめ、
「…お前に、弥子ちゃんトコの事務所からわざわざ荷物が来るなんて珍しいって、婦警達が噂してんの聞いたからな」

 だから、そのあたりの婦警に聞いただけなのにすぐに手元にきたのか…と、妙に納得する。


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