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〜明けない日はない〜 01
「はぁ〜…」
幾度吐いたかわからない溜息は力無く、匪口青年の足取りは重い。
…あれから数日。
凄まじい口惜しさや自己嫌悪が…
ほんの少しの優越感や喜びとが…
入れかわり立ちかわりせめぎ合い、彼の頭を始終占め続けていた。
いくら考えても結論は出ず、思考は堂々巡り。
何が結論なのかすら、彼にはわからなかった。
いや…
―桂木が俺を許してくれて、今まで通り接してくれれば、それで、もーいーんだ…―
それは、男としての完敗を意味するようで、非常に情けなく極めて口惜しいのではあるが…
弥子との関わりを断たれるよりは、あの2人を傍観する立場に甘んじている方がずっとましだ…と、匪口は思いはじめている。
そう思う端から…
弥子の声を…弥子の感触を…思い出してしまう。
そしてその後に必ず…
彼女の後ろに控える、あの恐ろしい『男』の姿と声を……
弥子の探偵という立場上、あれきり逢わないというわけではないのが、まだしも幸いとはいえようが…
元に戻るきっかけ、手だてなど、匪口には皆目判らない。
「はぁ〜…」
また、溜息……
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