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20 〜逡巡する者〜 03
ああ…
全く、この女は…
そのような顔をされたら、こころを挫けさせられかねない。
…とうに判っていたことではあるのだが…
その程度で揺るがされるならば、何もかも全てを手中に収めるのは、やはり尚早であろう。
……何より、今はこれで充分満たされ、愉しい……
それでいい
…それでいいのだ…
焦らぬように…『喰い』時を間違わぬように…
今日のように意表をつかれ、奪われてしまわぬよう、気を払いながら…
これまで通り、待ってやれば良い。
巡らせた思考とは裏腹に、ヤコの唇を求め続ける矛盾を、我が輩は胸の内で嗤う…
……ヤコを……
手離すつもりはないのは、出逢った時から変わらん。
離れていかぬよう、離れる気も起こせぬよう、脅迫を…枷を…心身への影響力を…与え続けてきた。
後には、『進化』を促せるよう、様々な手を使い…
だが
今は……
何時の間にか、逆に陥れられた自身を知る。
ヤコは我が輩の思惑通りとなり、我が輩は。
…我が輩は、とうに…
そのような己から、目を逸らしていただけ、なのだ……
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