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〜思わぬ展開〜 11
顎を、膝と天井に挟まれた少女は、唐突のことばに思考が回らない様子。
―ことばも使いどころ…か…―
魔人は思う。
「ヤコよ…」
少女に顔を近づけると、自然と天井に押し付ける力は緩まった。
少女は息をつき、赤らんだ顔でこちらを見つめる。ついぞ目にしない表情に、魔人のこころは騒いだが、顔には出さず、囁く。
「貴様は『謎』のようなもの」
―泣いたかと思えば
叫ぶかと思えば
…笑っている…―
感情が表情にすぐさま出るこの少女のこころの流れは、心を読む能力を持たない魔人にすら手に取るようにわかるようでいて、わからないときもある。
わかりやすいからこそ、尚…というべきか。今の弥子のように。
そうして、何より。
この少女は、常人なら逃げ出すに違いない…凶暴性を孕む、支配欲に基づいた…数々の行動を、理解し受け入れる。しようとする。
無論無自覚なのであろうが、魔人はこれまで、それらを当然のことと捉えてきた。
ネウロが何をしようと…どのような虐待をし、どのような暴言を投げかけようと、弥子は、様々な表情と共に、ネウロの傍にいた。それは当然なのだと…
だが突如として、これまでの『当然』が、魔人の中で『謎』となる。そして『謎』とは、例え悪意はなくとも、魔人を惹きつけて止まないもの。
まして、対象がこの少女であるなら……
―手離すつもりがないのなら、全てを手中に納めるのが最良であろう。
全力で嫌がるのならば、時を惜しまずに振り向かせればいいだけの話だ―
ネウロは、思考は雄弁だが、無駄に語りはしなかった。
「だから…待ってやる」
「……」
「喰うに相応しいときがくるまで…待ってやる…」
「………」
返事のない少女に、
「我が輩の言っている意味は解るか…?」
囁き問うと、弥子は微かに頷いた。
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