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09 〜噛みつく者〜 02

 その感触すらも…悪くあろう筈がなく……


 舌先で血の球を舐め取るだけで、ヤコの傷口は塞がる。
 確認し、そのまま…くわえ込んでやる。

 唇を…
 唇で……



 だが……


 まだ…もの足りぬ。



 …ああ…

 我が輩が躊躇ったこととは、これなのか……





 止められぬこと。

 ……我が輩自身……



 だがもう、構うことなどありはしない。

 耐えられも、しない。



 ヤコの頬を押さえつけていた掌を、微かに滑らせる。

 片手を滑らせ伝わせ、耳に触れた後、肩にまわし、包み込むように抱いてやる…

 残る片手は、より一層、ヤコの頬を抑え込み……



 顔を無理に上げられ、気道が狭められたか、ヤコは苦しげな表情を滲ませる。


 自然と、かたく結ばれていた唇が開かれる。



「……ん……」

 脳をひどく揺るがす、好ましい声……

 感じる、ますます濃厚な…ヤコの『味』……





 わかっていたのだ、我が輩は……



 知ってしまえば…知らぬ頃には、最早戻れぬことを……



 このような美味なるものを…何故これまで放っておけたのかと、思うしかないのだ…と……



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