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08 〜噛みつく者〜 01

『……嘘つき』


 ヤコは言った。


 やはり見抜いた。
 やはり…言った…

 …その…唇で…



 ……こころが、虚ろになる、など……
 このような経験は、かつてないこと……



「……ッ」

 苦痛に呻く声に、我に還る。



 ……我が輩は……

 ヤコの唇に…噛みついていた……


「………」
 見れば、ヤコの唇から、色鮮やかな血が…球状となって滲み出て……


 だが

 ヤコは我が輩を見上げ…


 …笑ったのだ…




 ヤコよ……

 我が輩に噛みつかれ、笑うのか貴様は……



 いや…違う、のか…


 …そうして欲しかったのか、ヤコよ……





「ヤコ」

 無意識に手の内の女の名を、呼ばわる……


「ネ、ウロ…」

 怯えているのか、震えているだけなのか、俄かには判らぬ声音で、ヤコは我が輩の名を呼ばわる……




 ……何を臆することがあったのか……


 求めるものは、互いに同じであったのに……



 我が輩は。

 ヤコの唇に滲み出る血を舐め取ってやる…


 ヤコの血は、はじめての『味覚』ではない……


 悪くはない。


 悪く…ない……




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