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〜思わぬ展開〜 12
そして今の体勢が記憶に直接伝えること…
―…忘れるな…―
魔人は、以前も同じことをした。あのときは意識していたわけではなかったが。
―……忘れるな……―
少女のこころの揺らぎが魔人に解らなかったように、少女にもまた、魔人のことばの深い所以は解らない。
しかし…
全身が、ネウロが何を言わんとしているかを、理解した。
些細なことがきっかけであれ不本意な展開の末であれ、いずれ避けては通れないこと、なのかもしれない。
共に在ることが必要ならば。
「………」
そう思うと、知らず涙が出てきた。
―我が輩は…
この女の涙は…苦手だ―
弥子は、ひとのために涙を流せる。
魔人には理解不可能なこと。
ただ、ひとのために涙を流せる者が、自分のために涙を流す…その姿、重みが堪らないのだ……
「…だから泣くな」
―何が『だから』なのか…―
「…だって…」
思わず手を差し伸べ…頬を伝う涙を、拭い取る。
涙に濡れた革手袋の指を、無意識に口に含む。
味など感じない筈なのに…
少女の涙は、喉の奥に、未知の『味』をもたらした。
―悪くない……―
密かに、想う……
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