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04 〜惑う者〜 02
……何ともまぁ……
匪口にはああ言ったが、我が輩は思わざるを得ない。
…たかだか、皮膚の薄い箇所同士が触れ合った程度で、こんな短時間で目の周りが腫れ上がるほど泣くこともなかろうに、と……
そう…たかだか…その程度…で……
……我が輩は、匪口に対して殺気に属した感情を、露わにしたのだった…な……
「ネウロ…」
ヤコは我が輩を見上げ、何かを訴えるかのような、震える声を…
泣きはらし、醜い筈のその表情はしかし、得も言われぬ感情を…我が輩に縋りつかずにいられぬ衝動を、無理に押し込めているような媚態を…漂わせていた。
我が輩の何かをも、震わせかねない声音で……
「何という顔をしている」
他に言いようがなく、我が輩はそれだけ言う。
震えている…
唇が…
こころが……
我が輩は、出鼻を挫かれた心地となる。
そのような我が輩の胸の内を…今のヤコが察する程の余裕はなかろうが…
察せられるなど、我が輩が我が輩自身に許すことは出来ん。
…つとめて、無関心を装えるよう気を払う。
……思うより遥かに難解な課題では、なかろうか……
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