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〜助手にさざ波を…〜 17
視線を定め、少々ことばを出し惜しみしてやる。
判ろうとも…
解らずとも…
……このひとことに。
「…この僕を差し置いて……」
匪口は、思った程愚かではなかった。
全身が総毛立ったような、蒼白な顔となる。
…だが、許容を遥かに超えたか、逃げ出してしまう。
……逃げ出すくらいならば、ヤコに手出しなぞ、しなければよかろうものを……
衝動に、誘惑に、勝てはしなかったのであろうが…
ヤコの内の何かを見抜き魅せられる『目』だけは認めてやらんでもない…が…
気付けぬのならば、やはり匪口…貴様は愚か者でしかないのだ……
真に愚かなのは、我が輩の方であろうことを……
誰が愚かであろうが、何であろうが……
些細なことにとらわれる必要など、ない。
……我が輩は決して譲れぬものを手段を選ばず護るだけ……
その為ならば…何を厭うことがあろうか。
愚か者となり果てた、おのれを痛感し笑うことすら…厭いはしないのだ……
我が輩は自嘲の笑みを、ひとり漏らし、踵を返す。
事務所へ…
ヤコの元へ、戻ることとしようか……
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[*前P]
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