main storyT
〜続・結也の短い夢〜 04
「桂木」
呼ぶと、桂木は胸に添えた手ごと、びくっと体を震わせた。
「わかっちまったんだろ?」
俺は主語も詳細も省いて、聞く。
桂木ならきっと解るだろうから、余計なことは言わなくて構わないんだ。
「だっ…て…だってそれは…」
たどたどしく震える、桂木の声。
軽々しく謝らない桂木は、意外に賢明だなと思う。
もっとも、謝りもしないってコトは、望みも何もありゃしないって証拠でもあるんだけど…
今更気になんかしねーよ、そんなコト。
『今の女はだいたい相手がいるものだぞ。欲しくば奪い取らねば、得られるものも得られん』
笛吹さんは、そんなこと言ってたっけ。
そう、思ったら……
震える身体と同じく、小刻みに震えてる、顔の一部分に、目がいっちまった。
可愛らしい声を紡ぐ、そこ…
可愛らしい声で俺を呼ぶけど……
いつもいつも、アイツの名を呼んでる、そこ……
…俺は何考えてんだ…?
あぁだけどだけど……
出逢ったときにはもう、とっくにこころはアイツに囚われてた女の子…
たぶん、その娘に同じようにこころを囚われてる、化けモン……
.
[*前P][次P#]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!