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〜以上…未満〜 09

「な………」


「…そこまでわかる貴様なら、既にわかっているだろう…」

 歩きながらの密着、そして囁きに、少女は動転する。

 こめかみの辺りに、魔人の吐息の熱さ。
 さりげなく頭に手を置いているようでありながら、拘束力は生半可ではなく、頭を動かせない。逃れられない……


―どうしよう…
 どーしよう…
 一気に形勢逆転されちゃったよー…―


「な…何を…?」

 弥子の問いに、思った以上の混乱を与えたことを察し、ネウロは笑いながらも短く溜息を吐き、囁き聞かせる。
「ヤコの言う通り、我が輩は確かに貴様の携帯の着信履歴を消したがな……
 理由は聞くな。貴様ならわかるであろう。
 だが、あの刑事の着信は本当に知らん…
 それが何故か…程度のこと、メールの件を考え合わせれば容易に判るであろうが…
 貴様は伊達に探偵はしてはいないな?
 …ならば、無駄な討論をしても致し方あるまい……」
 どさくさに紛れて、髪をかきあげ、生え際に唇を付ける。

「…………」

 言葉を瞬時に理解し、同時にすっかり毒気を抜かれてしまった弥子。



「わ…わかったわよ…不可抗力…なのね…」


 …だから離して…と言いたいのに、その言葉が出ない。




 不満も疑念も解決はした。
 が、戸惑いは、それらを遥かに凌駕している。
 弥子の中の不満や疑念は、解決したというより、有耶無耶になったというほうが、むしろ正しいのだ。









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