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〜以上…未満〜 04

「…笹塚さん、本当にごめんなさい…」

 口惜しくはあったが、どうにもならない。
 弥子は、助手の両手でこめかみのあたりを挟まれ、頭を下げさせられ、自分は腰を曲げ、心の底から謝る。


「………」
 まだ釈然としない部分があるのは否めないが、そのような事情であるなら仕方がない。
 ここ数日の不安が解消されただけでも良かったと、笹塚は思い直す。


「…いや、いーんだ。
 風邪、しんどかったろ?今はすっかり元気そーで、良かったよ」
「…ハイ!」

 一瞬で切り替わる表情。若いからこそだ…と笹塚は思う。
 そして…自分に向けられた素直で可愛らしい笑顔は、ひどく眩しい。見ている笹塚も、自然と目が細まる。

「…でも、病み上がりなら、あんま無理しないコトだね。
 そこの助手さんはわかってんだろーけどさ」
 …と、今は弥子の両肩に両手を置く助手を見やる。

「…忙しーんだろうけど、あんま無茶はさせないことだな」


「無論ですよ。大切なお体ですからね…」


 その言葉に、弥子がネウロを見上げた。




―……あれ…?―

 本心を伺うことを許さない類の…そもそも感情がこもっているのかどうかも疑問に思わざるをえない…
 瞳だけは笑っていない『無表情な笑顔の鎧』とは、助手のいつもの表情ではあるのだが…
 『助手』は『探偵』の視線を捉えると、その鎧が僅かに揺らぎ霞んだような笑みを、少女に向けた。


 笹塚にも、漠然とながら、その違いは見て取れたのだ…








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