main storyT
〜以上…未満〜 03
全て、自分からの着信記録であったのを確認し消去したのである。
―尤も、笹塚刑事の名前を確認したところで、同じことであったろうが―
…とは、如何にも魔人らしいネウロの内心。
あの日ネウロは、苛立ちに任せ、立て続けに弥子の携帯にリダイヤルを繰り返していた。
恐らく笹塚の着信履歴は押しやられ、既に消去されてしまっていたのだろう。
弥子の表情から、ネウロが、笹塚からの着信を知りながら故意に消去したと思っているようであるのを察し、やれやれとばかりに、
「…先生は数日前風邪を召されてしまわれましてね」
やむなくフォローすることにしたネウロは、
―取り繕うのも、なかなか骨が折れるものだな…―
…などと思い、それでも胸中で密かに嗤う…
「…そうなの?弥子ちゃん」
笹塚は驚き、少女に問う。
「…はい…あの…そうです…」
それは事実であるにも関わらず、弥子は何故か赤くなり、しどろもどろに答えた。
―…さては、何かを思い出したか…―
ネウロは顔に出して笑い、
「…ナントカは風邪ひかないと申しますのに、先生はそれに輪をかけた、うっかり者でいらっしゃいますから。
ね、先生」
と、朗らかに『探偵』を覗き込む。
「……なら、全く風邪なんかひきそーもないあんたは…
…ッ…んぎゃっっ!!」
フォローに対する、弥子の悔し紛れの突っ込みに、しっかり陰で制裁を与えたネウロは、笑顔は絶やさないまま。
「…ですから、笹塚刑事からのお電話にお気付きになれなかったのだと、思います。
本当に、面目次第もございません…助手の僕からもお詫びします。
…ホラ、先生も謝って!」
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