main storyT
〜以上…未満〜 02
助手が何をしたわけでもないのにもかかわらず、笹塚は、
―やり辛ぇな…全く…―
…と、思ってしまう。
「…コレを、弥子ちゃんにあげようと思ってさ…」
ビニール袋独特の音をわざと立て、笹塚は手にあるものを差し出す。袋の銘に饅頭の文字を認め、少女は顔を輝かせた。
「あっ…!
ありがとうございます!!
…でも、いいんですか?」
「いーんだよ。どーせ俺食わねーしさ。コレもさ、一番喜んでくれそーな人に食ってもらう方が、いーんじゃねーの?」
照れを誤魔化すように、殊更にぶっきらぼうに答える笹塚から、弥子は嬉々として袋を受け取り、頬ずりしながら、
「ホント嬉しい!!
…でも用事なら、ケータイに電話くれればよかったのに」
何気なく、言う。
弥子の言葉を聞き、笹塚は溜息混じりの紫煙を吐いた。
胸中に蟠る鬱屈を解消出来そうなタイミングを、他ならぬ弥子自身がくれたと、内心思いつつ。
「………したけど…」
「へ?」
低い呟きに、弥子は顔を上げた。
「したって、事務所に?」
「…いや、弥子ちゃんの携帯。何日か前だけどね」
「………」
携帯に笹塚からの着信があった覚えなど、弥子にはない。
しかし…数日前といえば、弥子が風邪で苦しんでいた時期。
それならば、思い当たることは、ただひとつ……
―もしかしてもしかしたら…!
ネウロが消しちゃった着信履歴の中に、笹塚さんのも、あったのー!?―
思い至った弥子が、思わずネウロを睨みつける。
「…?」
ネウロはきょとんと視線を返す。
確かにネウロはあの日、弥子の携帯の着信履歴を消しはしたが…履歴に笹塚の名前など見てはいない。
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