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〜もどかしさ〜 07
「ねぇ、ネウロ?」
唐突に弥子が呼びかける。
「………」
呼び掛けに、ネウロはすぐには返答出来なかった。
たかだか名を呼ぶだけのそのひとことで…自身の苦手とするものを、改めて悟らされてしまったが故に…
「……何だ……」
ようやく、一言返す。
「あんたは、風邪うつったりしなかったの?大丈夫なの?
だってあんなに……」
「…あんなに……?」
ネウロは新聞で弥子の顔を寄せ至近距離で、言葉の終わりを繰り返す。
「……い…いや…その…
あたしが一番具合悪い時に…だし…とにかく…うつらなかったかな…って……」
「………………」
―このように…たわいなくしどろもどろとなり、赤くなる……
何ということはない下等生物でしかないというのに…―
「この我が輩を案じていられる身の上か貴様は」
応えたのは、身に覚えのある台詞。
突き放す風情のことばでありながら、ネウロは弥子を新聞で自分の胸に押し付け離さない……
―ヤコは…我が輩に対して自分からものごとを乞うことが殆どない…もとより期待などしていないからなのであろうが…
そのヤコが、我が輩に何かを問うたり希むとき………
我が輩を呼ぶ声の高さが変わる……
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