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〜もどかしさ〜 06
それが済むのを見すまし、ネウロは少女の華奢な体を掬いあげ、再び懐におさめた。
そうして、テーブルの上の新聞に手をのばし、ガサガサと紙面を広げ、読み始める。
今それをするということは、一度は読んでいるのだろうと、弥子にはわかっている。弥子も黙って紙面を眺める。
…優しい沈黙が、こんなにも心地良い。無体な行いは別にして、このように流れる時間は、純粋に、嬉しい…
目線は文字や粒子の荒い写真を追いながら、弥子はこころの奥をうっとりと漂う。
意識がここにないことを、少女を懐に抱く魔人は、容易に察した。
人外の存在である筈の自分にここまで無防備に己を預ける者に、魔人としての本能が、蠢く……
……このまま……
閉じ込め……
縛り付け……
己が思いの及ぶがまま……
何もかもを我がものとすることは…限りなく容易……
だが………
…それはこの少女の歩みを絶つことであり……
それは即ち
己が命を自ら危ぶませることなのだ…………
魔人は、知り初めた欲望の恐ろしさを、あどけないとしか感じられぬ少女によって、痛感させられる……
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