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短篇
僕から君へ、さいごのことばを

君と出会えた日々

それは――――――



『僕から君へ、さいごのことばを』








白い病室 509号室。

そこが僕の城。

いつからいるとかもう覚えてない。
ひとことで言えば、物心ついたときから。

「…い、上条先輩!」

ふと気付けば、心配そうに僕の顔を覗き込む彼女がいた。

「うん?どうしたの」

にっこりと笑ってみせる。

「急に黙り込まないで下さい!もう…」

彼女は、そう叫ぶとベッドの隣に座り込む。

「ごめんね」

彼女の髪に手を伸ばす。
彼女の髪は柔らかくて、ふわふわしている。

「いえ…私こそ」

彼女は、ふわりと花のような笑顔を浮かべる。

「ね、秋穂。傍にきて」

彼女の名を呼ぶ。
彼女は驚いたように目を丸め、近寄る。

「上条先輩?」
「もっと」

彼女の顔が僕に近付く。
不思議そうな顔をしている彼女を見つめ、
唇を重ねる。

「!」

驚き、離れようとする彼女の腕を掴み、
身体ごと抱き寄せる。

「んっ、…かみ、じょ」

息継ぎの為に、一旦、唇を離し、またくっつける。


何分くらい、重ねていただろう。
彼女の身体から力が抜ける。

きっと、気絶してしまったのだろう。


僕は彼女をベッドに寝かせ、点滴を片手に
病室を出る。

向かう先は、屋上。

青が広がる空に目を奪われ、久しぶりの風に身体を震わせる。


給水塔の裏に行き、そこに置いておいた画材を手にする。



それから、陽が沈むまで屋上で過ごした。


その帰り道、僕は廊下で意識を失った。


次に目が覚めたときは手術台の上。
医者達が何か言っている。

けど、僕はもう知っている。
自分の運命を。

だから、近くにいた看護師に手を伸ばす。

看護師は、すぐに顔を近づけてくれる。


一言、二言告げて、僕は笑う。


看護師の悲痛な表情が目に入る。


でも気にせず僕は、眠るように意識を手放した。

後悔は、……………ない。


だって、遺してきたから。















『僕から君へ、さいごのことばを』

(今までありがとう、愛しているよ。僕はいつまでも君と出会った屋上にいるよ。)







*******
初短編☆

悲恋風味でごさいます♪
近々、彼女目線でその後の短編を書く予定

ここまで読んで下さってありがとうございます◎^▽^◎



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あきゅろす。
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