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short
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* * *



三限のドイツ語を惣と並んで受講し、次回の長文翻訳に頭を抱えながら教室を後にする。


「惣って確か四限もあったよね?」


学科どころか学部も違う僕らが一緒に講義を受けられるのは共通選択の第二外国語くらいで、この後の四限目はそれぞれ学科必修と学科選択の講義があった筈だ。僕の場合は、今日は教授の急病で休講らしいけど。

一人で先に帰って買い物して、後で家に寄って貰おうかな、などと思っていると、惣が小さく首を振った。


「確かに四限はあるけど、今日は休講だ」
「あ、ホント? 僕も休講なんだ。じゃあ一緒に帰る?」
「…スーパー寄るんだろ?」
「寄るよ」


あれ、惣は買い物行きたくないのかな。

首を傾げると、疑問を口に出すより先に惣は口を開いて「別にいいよ」と答えた。それは、寄って行ってもいいって事かな?


「ご馳走して貰う立場だからな、荷物持ちくらいしようか」
「いいよ、いつもお世話して貰ってるお礼だしさ」
「…別に、世話するのは嫌いじゃねえから、構わねえよ」
「惣ってやっぱり面倒見良いよね」


にこりと笑みながら言うと、惣は小さく肩をすくめた。

お前相手だからな、なんて惣が口の中で呟いたのは知らず、僕は機嫌良くキャンパスを歩いた。

正門の方から流れてくる人波の中から、ふと見慣れた友人の姿を見付けて声をあげる。


「圭也!」
「お、依月…に惣も一緒なのか。よっす、昨日振りー」


ひらひらと手を振りながら此方へ掛けてくる、明るい茶髪の頭。何処にでもいそうな軽そうな大学生らしい容姿をした彼が、僕のもう一人の友人両角圭也だ。

足を止めた僕らの目の前まで駆けて来たそうは、二人揃った僕らの姿を見て首を傾げる。


「……あれ、ところで二人何で一緒? 授業は?」
「あ、今日は休講だって」
「は?」


きょとんとした顔になった圭也に、あ、しまった、と小さく顔をしかめる。

圭也と僕は学科が同じで、必修科目が一緒だ。そして僕は、圭也が今日は四限の必修しか取っていないのを知っている。

表情を変えた僕を見て、圭也はガシッと僕の肩を掴んで揺さぶった。


「ちょ、依月さん? 同じ学科なんだし、普通休講だって先に知ったらメールくらい入れてくれるもんだよね!? 俺が今日はコレしか取ってないの知ってるもんね!?」
「ご、ごめん……、忘れてた」
「酷いわっ! ワタシのことは遊びだったのねっ!」
「……何がだよ」


よく分からないノリで小芝居を始めた圭也に、隣で呆れた目で様子を見ていた惣が呟く。


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