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「お前も自炊だろ? 何作るんだ?」


とんかつを口に運びながら、惣が訊いてくる。

一人暮らしの僕は、一応ひと通りは家事をしている。同じく一人暮らしの惣も、家事はするみたいだ。実家暮らしの圭也は、ゴミ出しくらいしかしないみたいだけど。

肉料理を食べようとは決めたものの、冷蔵庫に肉入っていなかった筈だ。うどんに箸をつけながら、僕は首を捻る。


「うーん…、それはスーパーのセールと、お財布との相談かな」


金欠という程切迫している訳じゃないけど、あまり贅沢は出来ないし。肉なら割と何でもいいかと思っているふしがある為、安いものを適当にで構わない。

僕の答えに、惣はクッと小さく笑った。


「挽き肉が安かったら、ハンバーグにでもするか?」
「何? 惣、ハンバーグ食べたいの?」
「あぁ。何か食いたくなった」


言いながら、現在進行形で食べているとんかつを口へ運ぶ惣。

今も肉、しかも揚げ物を食べているにも関わらず、夕食の献立の希望を出すのか。食いしん坊だな、惣は。

そう口に出すと、食べ盛りの男はこれが普通で、僕が食べなさ過ぎなんだと言われたが。僕、そんなに少食かな?


「うーん…、挽き肉が安かったら惣も食べる? ハンバーグ」
「…いいのか?」
「自分でリクエストしたんじゃん。いつも僕らが惣の家にお邪魔しちゃってるし、たまにはね」


惣が僕の家に来るのは初めてな訳じゃないけど、あんまり多い事でもない。惣の家の方が大学に近いし、集まり易いからね。

いつも色々お世話させてしまっている惣に、たまには何かお返ししてもいいだろう。


「…あっ、でもバイトとかある?」
「いや、今日はない。……楽しみにしてる」
「……男の手料理なんて、楽しみにされても」


珍しく嬉しそうに笑う惣に、僕は苦笑いする。特別料理が上手いって訳でもないのにな。…そんな風に期待されて、悪い気はしないけど。

卵の黄身を崩しながら、僕はぼんやりと思った。

これはもう、挽き肉が特別安くなくてもハンバーグを作らなきゃいけないなぁ。…まぁ、いいんだけど。こんな会話をしていたら、僕も何だかハンバーグが食べたくなっちゃったから。

あ、食パンも買わなきゃな。繋ぎはパン粉よりも食パン派だから。


「…依月、夕飯の事考えるのもいいけど、まずは昼飯食いきれ。うどん伸びんぞ」
「あっ」


なんて、夕食の事ばかり考えていたら、手の方がすっかり疎かになっていて。

いつの間にかとんかつを完食していた惣から、そう突っ込まれてしまった。

話、振ってきたのは惣なのに。


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