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「…セイン、じゃあ私をお兄ちゃんだと思ってもいいんだよ?」
「…は?」


アリアとセインのやりとりを見守っていたヘンリーが、ふと思いついたように笑顔で言った。

不満げに唇を尖らせていたセインは、いきなり何を言い出すのかという表情で彼を見上げる。

セインの顔を覗き込むヘンリーは、にこにこと言葉を続けた。


「セインに『お兄ちゃん』って呼んでもらったら、嬉しい気がして」
「……、そっちか」


呆れたような声で呟いたのは、セインではなくアリア。セイン本人は、ぽかんとヘンリーを見上げて口を開けている。

相変わらず何も分かっていないランスが、サンドイッチを手にしたままハイハイと手を上げた。


「何か面白そうだな、その遊び! なぁフィーネ、俺のことお兄ちゃんって呼んでよ」
「へっ!?」
「いや、どう考えてもお前の方が弟だろ」


誕生日もフィーネの方が早い。いきなり水を向けられて目を丸くしたフィーネに代わって、呆れながらエリオットがツッコむ。

その向かい側では、ヘンリーが固まってしまったセインにぐいぐいと迫っていた。


「ほら、セイン。呼んでごらん?」
「は、え? えっ、…お、お兄ちゃん…?」


家では専ら『お兄ちゃん』ではなく『兄さん』と呼ばれているセインは、戸惑いながらもヘンリーの勢いに押されてそう口にした。

たどたどしい『お兄ちゃん』に、ヘンリーが笑みを深くする。


「うん、いいね。たまにはそう呼んで? 例えば……夜とかに」
「へっ?」
「……、まだ昼間っすよ」


彼の向かいに座っているが為にその低い囁きが聞こえてしまったエリオットは、ツッコむ事に辟易しながらもそう言った。

二人の関係は一応知っているし当人たちがいいのであれば否定などしないが、目の前で“そういう”会話を繰り広げるのは流石に止めて欲しい。

エリオットのツッコミが聞こえているのかいないのか、ヘンリーは機嫌良くセインの頭を撫でている。

ため息を吐くエリオットのローブの袖を、隣からツン、と引っ張る小さな手。


「…アリア?」
「……ん、おにいちゃん……」


舌足らずな声で、じっと深緑の瞳で此方を見上げて。

普段から幼い雰囲気が強調される仕草に、エリオットは思わず叫んだ。


「あざとい!! でもまぁいい、可愛いから。よし、お兄ちゃんがまたケーキ頼んでやるから、選べ」
「……わぁい」


くしゃくしゃとアリアの頭を撫でてメニューを広げたエリオットにツッコミを入れる人間は、残念ながらこの席にはいなかった。

代わりに彼らグループの周囲に座っていた学生たちが、はぁ、とため息を吐く。


――ダメだ、こりゃ。


でもまぁ、妹・弟キャラはロマンだ。














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エリアリがツッコまないと誰もツッコミがいない事が判明(笑) そんな感じの、オールスター息抜き小咄でしたww

それぞれの家族構成や家業なんかを決めたのはいいんですが、上手い事本編に組み込める気がしなかったので。でもここでも家業までは書けなかったな(^^;)

一応エリオットが割と大きい商家(割と金持ち)で、アリアは秘境扱いな独自文化を持つ山奥の出身。ヘンリーは中流貴族(と言ってもアカデミー内では割と貴族とか庶民とか関係ない)で、セインは普通の一般市民です。ランスとフィーネの家も一般市民です。


そのうちエリオがアリアをお家に連れていく話が書きたいですねww


13/8/21

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あきゅろす。
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