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「……本気、な」
「…あぁ」
極力真面目な声で訊き返すと、神妙に頷かれる。
唐突な衝撃告白に思わずパニクって何度も確認してしまったが、惣はタチの悪い冗談など言う人間ではない。彼がこうして言う以上、本気、なのだ。
……しかし、相手は依月か……。
確かに俺の目から見ても、依月はいい奴である。
おっとりとした、癒し系。細かい所によく気が付き、少し控え目で気が優しい。男だったらこういう女の子を彼女にしたいかなー、なんていう項目のうちいくつかの性格特徴を満たしているような性格でもある。
だけども依月は、やっぱり男な訳で。高校時代は一応普通に彼女もいたらしいし、性嗜好は普通にノーマルだろう。
惣と依月は、仲は良い。それはあくまで“親友”としてだ。
「……それで、どうする気なんだよ、お前」
アプローチとかかけていくつもりなんだろうか? 幼なじみ兼親友の恋路なら一応、複雑な心地ながら協力は惜しまないが。
そう言うと、眉根を寄せ渋い表情をした惣が緩く首を振る。
「……依月のことは、好きだ。抱きたいとか啼かせたいとか俗な事も思うけど、……悲しませたいとは思えない」
「……」
「依月は、俺ら三人でバカ騒ぎするのが好きだって、いつも言ってるよな」
アルコールは苦手な依月。それでも彼がいつもにこにこと俺らの呑み会に参加するのは、俺らと一緒に居るのが好きだから。などと酔いで顔を真っ赤にさせながら言っていたのを、何度か聞いている。
「俺が依月に手を出したりモーションをかけるなら、今までみたいな純粋な友人関係ではいられない。……この関係を大切にしてる依月を、悲しませる事になるだろ」
「……それじゃお前、どうすんの」
そんな切なげな顔で、依月のことを語るくせに。高校の時の彼女と別れた時だって、そんな痛そうな顔はしなかったくせに。
はっきりした性格の惣の歯切れの悪い態度に、俺の方の眉間に皺が寄る。
ため息を吐いた惣は、疲れたように力なく首を振った。
「どうもしねえよ」
「…どうも、って」
「依月のことは好きだ。……でも、出来る限りセーブして今までの関係を保つようにする」
「……それじゃあ」
お前はキツいんじゃ、ねえの。
口から零れかけた言葉は呑み込む。そんなのは、本人は百も承知だろうから。
首を振って空のコップを手で玩びながら、俺は惣に視線を戻す。
「…何でそれ、俺に言ったんだ?」
責めるような口調にならないよう、極力穏やかに。
知ってしまった事実を嫌だとは思わなかったが、ただ気になった。
本人には告白しないのに、俺に溜め込んだ感情を吐き出した惣の気持ち。
惣は此方にちらりと視線を投げ、ゆるりと首を振って小さく呟く。
「……別に、一人で腹の底に溜めておいたら、すぐに限界がきそうだから吐き出しただけだ。…お前相手になら、別に話しても大丈夫だろ」
「…そっか」
こういうトコでデレるんだから、惣はズルいよなぁ。
やっぱり俺は出来得る限りの協力はしようだなんて、改めて思っちゃうじゃないか。
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