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そのまま圭也に揺さぶられている僕を引き剥がすと、宥めるようにでも呆れながら惣は言う。


「まぁ別にいいだろ、そんなに遠くもないんだし」
「…まぁいいんだけどさー。露骨に『しまった』って顔する依月が、ちょっと面白かったから」
「…面白かったって…」


それは何か酷くない? …いや、連絡するのを忘れてた僕も酷いかもしれないけどさ。


「んー、でもごめんね、忘れてて」
「まぁいいって。今度何か奢ってでもくれれば」


ぽんぽんと肩を叩き、圭也はにししと笑う。

奢る、っていうかご馳走するって形なら、今日直ぐにでもお詫びは出来るけど。


「あ、良かったらこのまま家に来る? 夕飯にハンバーグ作ろうって話してたんだけど」
「うん? それって依月が作ってくれるって事? だったら……、うおっ」


圭也が何やら口を開こうとした途端に、惣が圭也の首根っこを掴み少し離れた所に連れ去ってしまう。

圭也をズルズルと引きずる惣の表情がどこか焦っていたような気がして、僕は首を傾げる。どうしたんだろう?


「(ちょっ、何なんだよ惣? 心配しなくても、俺邪魔なんかしねえよ?)」
「(…いや、違う。お前が断ろうとしたのは分かったんだよ。逆だ、お前も来い)」
「(はぁっ!? …え、だってお前依月のこと……ちょ、痛い痛い痛い! 惣力強いって!)」


何やら圭也が痛い痛いと叫んでいるのが聞こえるが、それ以外は何を話しているのか全く伝わってこない。

惣が圭也をあそこまで引っ張って行ったんなら、あまり聞かれたくない話なんだろうけど、何なんだろう。

僕は首を傾げるが、近くに寄る事は出来ず遠くからただ二人の様子を見守った。


「(…いや、こないだ惣が自分で言ったんじゃん。……依月が好きだって)」
「(だからといって手を出すつもりはないとも言ったろ)」
「(言ってたけど……)」
「(あいつと部屋に二人っきりとか、正直理性が保つか怪しいんだよ。…いいからお前も付いて来い)」
「(何、俺ストッパー!?)」


惣が圭也の頭を小突き、どうやら密談は終わったらしい。


「……二人で何話してたの?」


戻ってきた二人に、多分明確な答えは返ってこないだろうなというのは知っていて訊ねる。

惣が微かに眉を上げ、圭也は誤魔化すようにぱたぱたと手を振って笑った。


「いや、ちょっとな。借りてたDVDの話」
「ふぅん」


多分、それは嘘だろうけど。

惣の方を見上げると、くしゃりと頭を撫でられた。


「…別に、悪い事を言ってた訳じゃない」
「そっか」


惣がそう言うんなら、頷いておく事にしよう。別に、友人二人が僕に悪いようにするとは思ってはいないから。

ただ少し、疎外感のようなものを感じなくもないけれど。


「あーっ、えー、依月の手料理だよな? 行く行く」
「そっか。…じゃあ、みんなで買い物行こ」
「あぁ」


言って二人よりも早く歩き出すと、僕よりも上背の高い二人はあっさりと僕の隣に並んだ。


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あきゅろす。
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