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トナリ

* * *



二限の講義が終わって鞄の中に入れていた携帯を取り出すと、惣からのメールが届いていた。

五号館の食堂で、席を取って待っていてくれているらしい。そのメールに講義が終わったから今行くと返信し、僕は荷物を持って椅子から立ち上がった。

今まで居た教室から、五号館は少し遠い。けれど、三限目のドイツ語を行う教室があるのが五号館なので、惣はその辺り考えて席を取ってくれたようだ。

お昼時の人の多いキャンパスの中、通り際に学生掲示板をちら見しながら歩く。

今日は四限目も講義の筈だったんだけど、講師が急病の為休講のようだ。


「ふぁ……、ん、じゃあちょっと、早めに帰って寝れるかな」


昨日何時に寝落ちしたんだか分からないけど、確実に日付は越えていただろう。二限の講義の間も、ずっと欠伸を堪えていた。

ふぁ、とまたもう一つ欠伸をかみ殺すと、五号館の食堂に辿り着いた。惣は何処かな。


「依月」
「あ、いた」


きょろきょろと食堂内を見渡す僕の姿を、入り口近くの席に座った惣の方が見付けてくれた。

ひらひらと気怠げに手を振る数時間振りの友人の姿に、僕は軽く微笑む。


「おはよう。今朝ぶり」
「あぁ、はよ。…ほら、荷物置いてっていいから、早く飯取ってこい」
「うん、ありがとう」


二人席を確保した惣の、向かい側の椅子の上に鞄を置くと、財布だけ持って食券を買いに出る。


「さて、何食べようかなぁ……」


とりあえず、惣のトレーの上に載っていたのはとんかつ定食だったけど。

僕的にはまだ僅かに酒精の気が残る躰で揚げ物は辛いから、彼と同じ物、という思考停止な選択肢は取れない。


「うーん……」


何か、軽めなもの。…月見うどんとかでいいかな。

小銭を販売機に入れ、出て来た食券を手に取ると、ポケットに財布を突っ込んで食堂のおばさんに声を掛ける。

2分と待たずに出て来た月見うどんをトレーに載せ、入り口近くの席に戻ると、山盛りのキャベツを噛み締めていた惣が僅かに眉を上げた。


「……それだけで足りんのか?」
「まだちょっとだけ、お酒が抜けてないからさ」
「…ったく、だからそんなに細いんだぞ、お前」


言って、僕の腰辺りを見やる惣。確かにあんまり肉がついてるとは言えない方だけど、服の上からはまぁ普通に見えると思うんだけどな……。

あぁ、でも昨日も惣にリビングから寝室まで運ばれてるんだった。そんなに軽いのかな、僕……。


「…夕飯は、肉にする」
「ふぅん」


帰りに駅前のスーパーに寄る事を決め、僕は一人頷きながら割り箸を割った。


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あきゅろす。
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