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アットホーム・ラブライフ
9

「えーと……、藤色? ってか、紫か?」


呟きながら雄飛から視線を逸らし、カップを探す。

そんなピンポイントの装飾のカップなんてそうそうあるだろうかとも思ったが、薄い紫の花柄……残念ながら藤の花ではなかったが、ちょうどいいカップとソーサーを棚の端から見つけた。


「あった。これは?」
「……あるものなんだな」


言った雄飛も、そうそう都合良く藤色のカップがあるとは思っていなかったのか、俺が示したカップを見て感心したように呟いた。

カップをじっと見つめそれから値札を見て緩く首を傾げたが、雄飛はやがてそのカップに手を伸ばした。


「……少し高いような気もするけど、せっかくだからこれで」
「大丈夫か?」
「想定よりちょっと高いか、ってところだけど、一応多めに持ってきたし。大丈夫」


デザインは気に入ったらしく、雄飛はそう言ってカップを手に取った。

デパートで買うよりも全体的に値段は少し高めになるだろうこの店に連れて来た手前、俺も少し払おうかななんて考えていると、雄飛はさっさとカップを宮野さんが眠っているカウンターに置いた。

爆睡しているのかとも思ったが、宮野さんはカップをカウンターに置いた音でちゃんと顔を上げた。雄飛とカウンターに置かれたカップとを見比べ、宮野さんは寝惚け眼のまま呟く。


「それを見つけてきたんだ……。なかなか趣味がいいね」
「はぁ」
「藤色のカップなんて、店にはそれ一セットしかないからね」
「え、宮野さん話聞いてたの?」
「え? 話?」


藤色、と先程の俺たちの会話のキーワードを口にした宮野さんに思わずそう口を挟むと、彼はきょとんとして首を傾げた。

もしかして寝ている振りをして聞いていたのかと一瞬危惧したが、その反応を見ると本当に寝ていたし話は聞いていなかったのだろう。

全く話を聞いていなかったのに藤色のキーワードを出したのはそれはそれで気にかかるが、もしあのやり取り聞かれていたら物凄く恥ずかしいので、とりあえず良かった……のだろうか?

首を傾げていると、雄飛が財布を取り出したので、そうだと声をかける。


「あ、そうだ雄飛、俺もちょっと出そうか?」
「あ? …いいよ、俺の買い物なんだし」
「いや、俺が此処に連れてきたんだし……」
「いーって。藤に出して貰う程じゃない」
「でも、ちょっと予算オーバーなんだろ?」
「別に大丈夫だって言っただろ」


レジを打とうとする宮野さんの前でそんなやり取りをしていると、眠たげな瞳のまま俺たちを見て彼ははぁ、とため息を吐いた。


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