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アットホーム・ラブライフ
15

(――いや、それって実は相当相手のこと好きだろ)


俺は男だし、今まで28年生きてきた中で付き合った異性も何人かはいた。抱き合った経験があるのは、当然女性相手だけ。
すぐ下の弟の柳みたいに可愛くて女性な訳ではなかったし、本気で同性に迫られた経験なんてある筈がない。

そして、例えば雄飛以外の男の友人知人にこんな風に迫られたとしたら……とっくに大怪我をさせない程度に相手を投げ飛ばして拒絶していただろう。

口説かれて戸惑うのは、雄飛だから。抱き締められてドキドキするのも、雄飛だからだ。


「……藤?」


黙ったまま自分の気持ちを整理していた俺に何を思ったのか、眉を下げた雄飛が小さく声をかけてくる。不安げな表情が、可愛い。


「うん。……雄飛、ちょっと腕の力緩めて」


一方的に雄飛に抱き締められているから、抱き返そうと思った。

けれど、雄飛は俺の言葉に瞳を揺らし、憮然と唇を尖らせた。


「やだ」
「逃げようとか思ってる訳じゃないって。ただ、これだけがっちり締められてると動き難いから」


身じろぎすら難しいくらいに締められている中でもぞもぞと躰を揺らしながら言うと、雄飛はほんの僅かに腕の力を緩めた。
…そんなに俺を離したくないのか。いちいち可愛い。

何とか緩んだ腕の中で自分から腕を伸ばし、可愛い年下の少年を抱き締め返す。


「っ!? 藤……!?」
「何だよ、自分から仕掛けてきておいて、自分がやられたら驚くのか?」


絶対、俺の方がびっくりしたんだぞ? お返しだ。

ビクッと震えて固まった雄飛が可笑しくて、俺はぐりぐりと彼の胸に額を押し付けた。あー、めっちゃ心臓バクバクいってる。

さっきまでの動揺はどこへやら、腕の中でクスクス笑い始めた俺に、雄飛が戸惑った声を出す。


「……んな反応されたら、都合良く受け取るぞ……?」
「いいよ。……雄飛なら満更でもないな、って思っちゃったから」


雄飛が好きだと、ストレートに返すのにはまだ気恥ずかしくて。そんな風に言って返すと、背中に回った腕がまた力を増した。

既に充分な力で抱き締められていたのに、更に力が込められて背中がギシギシと鳴る幻聴が聞こえた。ていうか、痛い!


「ちょっ、雄飛痛い! 背中痛い!!」
「うるせぇ!! 今のは藤が悪い!!」


叫び返す雄飛の腕の中で、懸命にバタバタと暴れる。照れ隠しはいいけど、流石に痛い!

本気で暴れると俺の方が力が強いらしく、何とか雄飛の腕から逃げ出す事に成功した。

もがいた時に振るった腕が二、三発当たったらしい雄飛が、恨みがましく呟く。


「逃げないって言ったじゃねえか……」
「いや、さっきのは仕方ないだろ」


拗ねたような雄飛の表情と言葉に、俺は小さく吹き出した。


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