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11×11

いつものように週に一度の買い出しの為、付いてきた月代と共にスーパーを見回っていると、ふとお菓子売り場の一角に作られた特設コーナーが目に入った。


「あ、そっか今日11月11日か……」
「…? それがどうした?」
「ほら、あれ」


ふと呟いた雪羽に、傍らでカートを押していた月代が首を傾げる。

雪羽が空いた手でお菓子コーナーを示すと、月代は不思議そうに瞳を瞬かせた。


「……ポッキー&プリッツの日?」
「あれ、月代知らないの?」
「知らない。初めて聞いたな」


怪訝そうな声にもしかして知らないのかと訊き返すと、あっさり知らないと頷かれる。

お坊ちゃん育ちだからなのか、本人が元々あまり世俗に興味を示さないからなのか、月代は妙に物事に疎い時が間々ある。初めの頃こそそれに驚いていたものの、段々と慣れてきてしまった雪羽はそっか、と頷くと簡単に説明を口にした。


「11月11日、って棒が四本並んでるようにも見えるだろ? だから、ポッキーとプリッツの日だ、っていうメーカーが決めた販促の日」
「ふぅん?」


あくまでも雪羽の所感である。身も蓋もない説明だが、月代はゆるりと頷く。

雪羽は特設コーナーとして棚にたくさん詰まれた箱の一つを取り、月代を振り向いた。


「せっかくだから、一つ買って行くか?」
「雪羽が食べたいなら」
「んー、まぁ久しぶりに食べたくなったかもな。じゃあこれ買って行こうか」


歪みない月代の返しに笑いながらも、雪羽は頷いて彼の押すカートの上に載せた籠の中に赤いパッケージの箱を入れた。



* * *



「あ、そうだポッキー食べよう」


買い物を終えて部屋に戻って、夕食を作ってそれを二人で平らげて。月代の膝の上に乗せられながら、食後ののんびりとした時間を過ごしていた雪羽がふと顔を上げた。

ローテーブルの上に放り出してあった箱を引き寄せると、月代がふと気付いたように言った。


「…そういえば、ポッキーは食べた事がないな」
「えっ、ホント?」


ポッキーの日を知らなかったのはまだしも、食べた事すらないだと?

これは流石に雪羽も意外で、思わずまじまじと月代を見つめた。


「流石に存在くらいは知ってるが。そういえば食べる機会はなかったな」
「食べる機会って……」


そんな食べる機会を作る程ご大層なものだろうか、ポッキーは。

思わず呆れ顔をしながらも、雪羽は手にした箱を開けた。


「じゃあ、今がその食べる機会って事で食べてみれば」
「雪羽が食べさせてくれるのか?」
「へ?」


開けた小袋ごと月代に手渡そうとしていた雪羽は、先回りした月代の言葉にきょとんと玻璃色の瞳を見張った。

紅梅の唇を歪め、ニヤリと笑う月代に、あ、してやられた、なんて思う。

けれどまぁ、嫌な訳じゃない。ポッキーの一本や二本、自分の手で食べさせるくらい。


(ポッキーゲームしたい、とか言われるよりはマシだし)


一体どこの誰が始めたのだか、恥ずかしさと頭の緩さ満載なあの遊戯をやりたいとか言われた日には……月代が言ったのなら、結局雪羽は逆らえずにやってしまうのだろうが、避けられるのならば無難に避けて通りたい。

ポッキー自体今日初めて食べる月代がそんな知識を持っている筈はなく、雪羽はこっそりと安堵して一本ポッキーを指で挟んだ。


「……はい」
「…ん」


パキッ、と細いスナック菓子の折れる音。

見慣れた紅梅が小さなお菓子を呑み込んでいくのに、雪羽は訊いた。


「…美味しい?」
「あぁ。雪羽が食べさせてくれたからな」
「……、そう」


じゃあ、もう一本。なんて小さく笑って雪羽は、案外楽しそうにお代わりを差し出した。















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ポッキー&プリッツの日! ポッキーゲームかと思った? 残念、さや●ちゃんでした!(笑)

月代は来年からは知恵をつけてきます(笑) 情報源はもちろん某オタク書記ですww

ちなみにプリッツは一応食べた事がある月代です。普段は二人とも、そんなに市販のお菓子は食べないって設定。


13/11/11

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