[携帯モード] [URL送信]
聖なる夜に花束を 3

他愛もない雑談や時折落とされる甘い睦言に頬を染めながら、二人は順調に皿の上の料理を減らしていく。

少々張り切り過ぎて二人で食べきれるかとやや不安だったのだが、そんな心配は要らなかったようだ。

すっかり皿を空にして、ふぅ、と小さく息を吐く。


「…ご馳走さま。美味しかった」
「ん、ご馳走さま。ありがとう」


優しく微笑みかけてくる月代に、はにかんで返す。

その後、食休みを交えながらひとまず食器を片付けようとキッチンに入った。

せっせとよく働く雪羽に、月代は小さく笑う。


「……雪羽」
「わっ…」


後ろからふわりと抱き寄せられ、背中に慣れた体温が触れる。

首筋に柔らかい感触が触れ、雪羽はぴくりと躰を震わせた。


「んっ、月代……?」
「雪羽」


優しく名前を囁かれて、また項に軽い口付け。

じゃれ合うような触れ合いも嫌いではなく、寧ろ月代から与えられるスキンシップを雪羽が嫌だと思う筈はなく。軽く身を捩りながらも、雪羽が彼の腕を逃れようとする事はない。


「……まだ、ケーキが残ってるんだけど」


もちろん拒む事はないのだけど、やんわりと咎めるようにそれだけ口にして。

それでも構わないと月代が言うのならば、ケーキは後回しでもいいやなんてこっそりと思う。


「メリークリスマス、雪羽」
「? メリークリスマス……えっ?」


先程も言われた言葉に首を傾げながら返すと、持ち上げられた左手にやや冷たい金属の感触。

するり、と誂えたように左手の薬指に収まるのは、細い金属の指輪で。……あまりアクセサリー類に縁のない雪羽だが、この光沢はシルバーではなくプラチナなのではないか、と瞳を瞬かせる。


「クリスマスプレゼント、だ」


雪羽の躰を背後から包み込むように抱き締めたまま、細身のシンプルな指輪を着けた薬指に触れるだけのキスを。

月代の囁きに、雪羽は戸惑いながらも彼を見上げる。


「え、でも……こんな……」
「俺が、雪羽に着けていて貰いたいだけだ。……言葉が足りなくならないように努力はしているつもりだが、物があっても良いだろう?」


身に余ると戸惑う雪羽に、自らの左手も示す月代。……気付かなかったが、彼の指にもしっかりと雪羽のものと同じデザインの指輪が嵌っている。

ペアリング。その意味を理解した雪羽の頬が、鮮やかな朱に染まる。


「あっ…えっと……」
「受け取っては、くれないか?」
「そんな事……!」


そんな事、ある筈がない。月代が雪羽の為に用意してくれた、二人を繋ぎ止める為のそれなのだから、嬉しくない筈がない。

思わず彼の腕の中で振り向くと、唇に触れる柔らかな感触。反射的に、瞼を閉じた。

啄むような口付けに応えながら、雪羽はその甘い陶酔に酔いしれる。

今、この瞬間で死んでもいいと思える程に、幸福だ。


「んっ……」
「…雪羽」
「ん、月代」


すき。声に出さない囁きを拾い上げ、月代が小さく笑う。


「……それから、寝室には雪羽の好きなかすみ草の花束を用意してある」
「え、いつの間に……」
「さっき、雪羽が料理の準備をしている間にな」


ゆるゆると雪羽の髪を撫でながら、月代が微笑む。

なんだ、雪羽が料理の準備をしていた間に、月代は月代でしっかりと聖夜の準備をしていたんじゃないか。

小さく笑いながら、雪羽は半身を捩って自ら月代の背に腕を回す。


「ありがとう。……でもまずはケーキ…な?」
「あぁ」


再び唇の上に触れる感触に瞼を伏せながら、雪羽は倖せに小さく息を吐いた。



Merry Christmas!

















--------------------
6年目にしてサイト初のクリスマスでした! とりあえず安定の月雪夫婦でww

一人で精いっぱいのご馳走を作って、雪羽は出来た嫁だな…とw ちなみに雪羽から月代へのプレゼントは色々思い悩んだ末に、万年筆です。高校生のセンスじゃないな(笑)

月代さんは当たり前のようにベッドをかすみ草のブーケで埋めてましたよ、意外と雰囲気充実の男ですよww


完成はクリスマスを過ぎてしまいましたが、みなさまメリークリスマス!


12/12/26

≪  ≫

33/41ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!