short (ss)
理由なんて、ねえよ @ 〜背を向けずに〜 (リクエスト)
拍手&コメントにて匿名さんからのリクエスト文です!
「なんでサスケはサクラちゃんを好きになったか…?」
という(私にとっては)か〜な〜り〜難しいテーマを頂きました。
タイトルまんまですみませんm(__)m
※戦争のあと、2年ほど経っており、サスケ(18)は、里にいます。
取りあえず、普通の任務を受ける中忍くらいのランクかと。
****
『あのときは、悪かった。……ありがとう』
今度は逃げずに、背を向けずに、向き合ってちゃんと。
―――――言いたいだけだ。
オレは、ここに帰ってきたのだから。
『 理由なんて、ねえよ @ 〜背を向けずに〜 』
その視線の先には、いつもあの彼女がいた。
いつも笑顔で、人々を安心させて。
誰よりも率先して前に出て、命を救うために必死だ。
―――――あのころのオレと、正反対。
命なんて、あるようでないもの。
自分一人の価値など、羽根より軽いと思っていた。
身体だって、容れ物でしかない。
死んだら、そこまでの人間だったのだ、とさえ思っていた。
『私が、絶対に…幸せにするから…………!!』
幼い日の彼女は、そう言った。
自分の身を、塵ほどにしか見なしていなかったオレに、手を差し伸べた。
――――初めての、救いの手だった。
これから修羅へ、奈落の底へと堕ちてゆくだろう、この身にとっては。
それは重荷で、眩し過ぎて、触れてはならない手だと思った。
――――ウザいほど、温かい手だったから。
****
「―――はい、おつかれさま。もう大丈夫ですよ」
今日も彼女は、患者から礼を言われる。
感謝される理由は、彼女が救ってくれたからだ。
―――――あのころのオレは。
他人の事なんて考える隙間のなかったオレには。
彼女の救いの手が、この愚鈍な目に入らず。
撥ね退けた。
「あら、サスケくん」
他の患者の邪魔にならぬよう、廊下で待っていると。
彼女が気付き、それに片手を上げて応える。
「待っててね」
彼女は次の患者に配慮し、もう少しで終わるから…、などとは言わない。
木の葉病院の診察室は、午前中はこの時間で一旦閉じる。
先程、1Fロビーの自動販売機で買っておいた缶コーヒーを投げて渡した。
「……ありがとっ」
パシッ、と受け取りながら、サクラは弾んだ声を出した。
「連絡事項だ」
「――――今日の夕方出発の任務のことだよね」
頷いて口をつぐむ。
早速彼女が、コーヒーを美味そうに飲んでいた。
―――たかが、缶コーヒーなのに。
手近にあった椅子に座ると、彼女も腰を下ろした。
手足を伸ばして、首のこりをほぐしている。
「……おまえは、よく働くな。寝不足じゃないのか?」
口にしてから、おかしな事を、と思った。
医忍として、忍の任務と同じ事をしているだけだ。
でも、正直な感想だった。
サクラは何の疑問も持たずに、オレを見返す。
「だって、みんなが待っててくれるんだもの、休んでなんかいられないわ」
そう言って、にっこりと笑う。
そういうものか、と思う。
「―――誰かに必要とされるって、受け入れて貰えるって、素晴らしいことでしょ?」
それはまるで、今のオレに向けられた言葉と、錯覚しそうになる。
その笑顔は、記憶の中の、幼い日のものと同じだった。
「……フン」
何故か、正視できなくなって顔を逸らし、鼻で笑う。
相変わらず歯の浮くような事を平然と言う奴だ。
こっちが痒くなってくる。
―――――――でも。
その通りだ。
自分が、何のために生きるのか。
自分は、誰の役に立てるのか。
突き詰めれば、そういうことだ。
感謝される。
その糧を得るために、昼夜問わず、身体を酷使して働く。
自分の価値を、見出すためなのだ。
「――――強くなったな」
「……えっ、なにが」
「――――何でもない。コレ、預かってきた」
今日の集合場所と詳細が記された書類を、彼女に手渡す。
そしてもう一つ、巻物の方には、必要な医薬品や何かが指定されているらしい。
正直、オレにはよくわからないが。
サクラが、すぐにそれを確認し始めるのを見て、ゆっくりと椅子から立ち上がった。
「あっ、サスケくん」
なんだ、と振り向くと。
「ありがと。後でねっ」
―――――眩しい、と思った。
変わらぬ笑顔に、背を向けて。
じゃあな、と無言で後ろ手を振った。
****
『サスケくんのことが、好きで好きでたまらない……っ』
後悔しているのかもしれない。
あの時、ちゃんと応えなかったことを。
イエスもノーも言えずに、自分の目的と運命を理由に。
背を向けただけだった。
―――――もし、今。
彼女に同じことを問われたら?
何の枷も無くなり、この里でのうのうと生きている。
断ち切ったはずの仲間との『繋がり』を手繰りよせて、徐々に結び直している。
自分の価値を、いつも探している。
いくら目を凝らしても、それを見つけるのは容易ではない。
こんなオレは―――――何と云えるのだろう。
『わたしが楽しくさせるから……後悔させない…っ』
忘れたはずの『あの場面』が、再び頭の中をよぎる。
その事に、また呆れる。
でも、もし、傍に寄りそえたら…?
「……相当、きてんな」
病院の外に出た所で、壁にもたれかかった。
彼女が、同じ事を云うかどうかなんて、それよりも。
眩しい存在を、直視出来ずにいるオレは。
まず、そんな事を考えている時点で、終わってる。
自惚れているわけではないが。
思いすごしでなければ。
確かに彼女は今でも、自分に好意を持っていると感じる時がある。
でも、それは、『仲間』だとか『友』といった類のもの。
確かに繋がりはある、だけど―――――それ以上は、考えられないはずだ。
昔の自分は、そうだったはずだ。
仲間以上の「繋がり」なんて、望まない。
望んでは、ならない。
今のオレには、そんなこと、もう叶わないのに。
願望もいいとこだ。
居心地の良い全ての愛を断ち切った、昔の自分を哀れに想う。
まるで、その反動だ。
『―――お願い、わたしと一緒に…』
「――――ありえねぇっての」
****
この里は、温かい。
人と人の結びつきが強く、常に見守られている安心感が満ち溢れる。
今ならわかる。
幼い日、全てを失ったオレは、此処に居たから、生き延びることが出来たのだ。
そして今、全てを果たして再びこの地に居る。
皮肉にも、一度は敵と見なした里のために、忠誠を誓っている。
―――――――理由なんて、ない。
多分、九尾を宿したアイツが言っていたことと、同じ様な事なんだと思う。
周りに受け入れてくれる人間がいたからだ。
そしてその人間の中には、当然のように……サクラが居た。
記憶の中の下忍だったサクラは、よく泣くやつだった。
任務中に泣き、別れの時に泣き、そして――――数年前の最悪な再会でも泣いていた。
地の底に堕ちたオレを、その手で処理しようと決意して。
そして、戦争の後でも、当然のように泣いていた。
――――――全部オレのためだった。
一体何故そんなに泣くことが出来るのか、理解できなかったが。
今なら、……ガキでなくなった今なら、少し分かる気がする。
今のサクラは、笑っている。
こうして任務がらみで会うことは稀だが、見ればいつも笑っている。
それも、多分。
オレのせいで、此処にオレが居るから、と考えて。
――――さすがにそれは自惚れ過ぎだと自嘲した。
「――――馬鹿げてる」
人が泣くのも、笑うのも、理由なんてない。
大事な人間が、そこに居るからだ。
そして、苦しんでいたり、幸せそうにしているから、自分も相手を想って、同じ感情を共有する。
――――――大事な人間が。
ただ、それに気付くのが遅かっただけだ。
本当は、ずっと前から感謝していたことを。
つづく
*********
2012.8.7
拍手&コメントからのリクエストありがとうございました。
とっても長くなりそうなので、分けてしまった…。
ええ、とっても長いです。
注意!!以下は管理人の、ぶち壊しあとがきです。
サスケがどうしてサクラちゃんを好きになったか…?
これは永遠の謎ですよね…とか言ってはいけないけどサスサククラスタとして!!
そもそも、サスケの辞書に「好き」とかいう単語が載っていないんだと思う。
きっと広辞苑並に分厚いとは思うけどね。
多分「修行」「修行」「修行」「任務」「任務」「任務」「兄さん」「ウスラトンカチ」とかしかないと思う。
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