人魚の歌 09 〈レオナルドside〉 歌が、聞こえる。 その歌を聞いていると、不思議と仕事の疲れが取れた感じがした。 セルが戻ってきた。 探し続けたセルが。 昨日は仕事が立て込んでいて話す時間がなかったが、今日は沢山話せる。 俺は歌が聞こえる方へ歩いていった。 「セル」 「っ、皇帝!!」 「久しぶりだな」 セルはあのテラスで海を見ながら歌っていた。 俺が声をかけると肩を揺らして勢い良く振り返った。 「お久しぶり、です」 そう言って、微笑んだ。 ああ、俺はこの顔に惚れたんだ。 「セル、話をしようか」 「……はい」 セルは一瞬躊躇ったあと、何かを決意したように頷いた。 まさか、これが合図だったなんて思いもせず、俺はセルに笑いかけた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |