人魚の歌 13 ……見つかったのか? カチャッと銃を構える音がする。 「アシュリー。静かに逃げるんだ。さぁ早く!!」 俺はアシュリーに耳打ちすると、ジャリッと音を立てて立ち上がった。 暗闇で、距離もある。 お互いに顔は見えないだろう。 「誰だ。まさか軍人か?」 男が尋ねてきた。 俺にそう聞くということは、軍人ではないらしい。 「……いいえ、違います。ただの旅の者です」 できるだけ穏やかにそう伝える。 「本当か?武器は?」 「ありません」 「……本当なんだな」 どうやら信じてくれたらしい。 「はい。それでお願いがあるんですが…」 初対面の人にこの頼みは図々しいかもしれない。 「何だ?」 「あの…今晩泊まらせていただけませんか?」 [*前へ][次へ#] [戻る] |