人魚の歌 05 タオルを貸してもらい、おまけに風呂まで貸してもらった。 風呂から上がると、ソファーに座るように促され、俺はソファーに腰を下ろした。 俺の正面に座っている女が口を開いた。 「私はソフィア・クロース。ビルの妻よ。私の隣にいるのが私たちの娘のダリアとジャンよ」 「俺は……アルです」 アルには悪いが、名前を使わせてもらった。 「改めて、ビル・クロースです。よろしく」 その後、ソフィアはキッチンへ行き、俺のために夕飯を作ってくれた。 「さあ、どうぞ」 「ありがとうございます。いただきます」 ソフィアが作ってくれたスープを飲みながらこれからのことを考えた。 城を出たい一心であんなことをしたが、よく考えてみると他に行くあてはない。 ビルたちにも迷惑をかけてしまった。 少し城が恋しかったが、もう今更だ。 一度出てしまったのだから。 自らの意志で。 [*前へ][次へ#] [戻る] |