人魚の歌 09 「……俺もいく」 アルが俺に言った。 「いや来なくていい」 「俺は…アシュリーが心配だ」 アルが来るのを拒否したのに、アルは尚も引き下がらない。 「お前が一緒にきて捕まったら元も子もないだろう。アシュリーが解放されたらあの場所から一緒にメロアに戻って欲しいんだ」 きっと俺は一緒に行けないから。 そう伝えると、アルは少し考えた後、 「今日は無理でも来年は絶対戻ってこいよ」 そう言って、アルはメロアへと続く海岸へ去って行った。 俺は暫くその場でアルの背中を見送ると、アルに背を向け、自分の任務を果たす為にゆっくりと歩き出した。 *** どれくらい歩いただろうか。 もう周りは約10メートル先を見るのがやっとのほどの暗さだ。 城も見えてきたし、多分もうすぐ約束の時間だろう。 1時間半以上も外を歩いてきている俺の体は、凍りそうなほど冷たかった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |