彩度(トランス)
皆の視界はそんなに綺麗なのだろうか
皆の世界はそんなに綺麗なのだろうか
皆の思考はそんなに綺麗なのだろうか
皆の感覚はそんなに綺麗なのだろうか
皆の愛情はそんなに綺麗なのだろうか
皆の体温はそんなに温かなのだろうか
皆の聴覚はそんなに敏感なのだろうか
(じゃあ、俺は)
風が、吹く。毛が揺れる。生きてない、加工品の毛が揺れる。生きてない、偽物の毛が揺れる。
皆が寒いと手先を赤くする。皆が暑いと頬を赤く染める。俺は変わらない。いつも同じで、なにも感じない。ただ生きていない毛束が揺れるだけだ。
「トランス」
「トロピー、様。どうされたランス?」
トロピー様は夕陽に照らされ、少しオレンジがかっていた。この薄青い肌でさえ、息をし、呼吸をし、血液を通してる。
生きている
「トランス」
「はい」
「夕陽に照らされて、オレンジ色に染まっているよ」
「え」
「ふふ、youは今オレンジカラーだねえ」
あぁ、トロピー様わかりました。貴方は、生きている、オレンジ色に染まっている、生きている手が、俺の頬に触れる。感覚はない俺の頬が、熱くなる気がする。気がつけば俺もトロピー様もオレンジ色だ。あぁ、違うんだ。気がついたら、俺とトロピー様だけがオレンジ色に染まってるんだ。
彩度
俺は、確かに生きている。貴方といるときは、確かに血液が循環している。
俺の視界が、今鮮やかに俺とトロピー様だけを映した。
(他の感覚なんていらない。他人なんていらない。ただ俺は、トロピー様だけ鮮やかなら、それでいいんだ。そして、今俺の視界は、鮮やかになった。)
**
俺的トランスはやさぐれてる
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